著しい成長を続けてきたインターネット通信販売市場に、“規制ラッシュ”が押し寄せようとしている。金融庁や厚生労働省が、消費者保護・安全性確保の点から規制の強化を図っているもので、各省庁の計画通りに実施されれば、商品購入時における支払い方法のサービス内容は変更される可能性が高い。医薬品販売は大幅に制限される。

 まず、金融庁が検討を進めているのは、配達時に商品と引き換えで支払う「代金引き換え決済(代引き)」やコンビニエンスストアで支払う「収納代行」の規制。2009年の通常国会に為替取引に関する法案提出を予定しており、このなかで規制を盛り込もうとしている。

 規制が実施されれば、規制対応コスト発生に伴う料金値上げや一部業者のサービス停止が予想される。また、マネーロンダリング防止のため、10万円を超える商品は本人確認が義務付けられ、たとえ家人であっても、委任状がなければ荷物を受け取れなくなる。

 厚生労働省が制限しようとしているのは、一般用医薬品(OTC)のネット通販。「対面販売」の原則に基づき、風邪薬や発毛剤など、副作用リスクの程度が比較的高い第1類・第2類の医薬品のネット販売を禁止。ビタミン剤など、リスクレベルが最も低い第3類の医薬品のみ継続して販売を認める。

 つまり、これまでネットで販売されてきたOTCの大半はネット購入不可となる。2009年6月に施行される改正薬事法に伴い、この規制を盛り込んだ省令が公布される見通しだ。

 こうした動きに対して、規制を受ける事業者や内閣府の規制改革会議が反発を強め、今、それぞれの省庁との間で最後の攻防を繰り広げている。現状では、代引きおよび収納代行では金融庁は劣勢、医薬品のネット通販では厚生労働省が優勢だ。

 ネット販売以外にも、生活者に密着したサービスという点では、タクシー業界に新規参入や増車を制限する再規制を導入するべく国土交通省が動いている。2002年の規制緩和によって過当競争が激化したことが理由。09年の通常国会に法案が提出される見通しだ。

 規制改革会議の草刈隆郎議長は、「いままで規制改革が進んできたのに、逆の方向に行っている」と浮かない表情。いずれの動きも、消費者の利便性低下は避けられない内容だけに、2009~2010年は規制強化の揺り戻しを生活者が実感する年となりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 臼井真粧美)