2008年の為替は、記録的な円高の大相場となりました。この背景には、行き過ぎた円安、やや大げさな言い方をすると、「円安バブル」破裂があったと思います。

 ところで、そんな円安バブルは、実はもうほぼ是正されたようです。ただ、相場は行き過ぎることが常であり、現在は行き過ぎた円高、「円高バブル」拡大が続いていると思います。

 2009年も、そのような「円高バブル」拡大が続くと思います。ただ、それが2009年で終わるのか、さらに2010年まで引き継がれることになるのか――その鍵を握っているのは米ドルだと私は考えています。

円安バブルが終わって
今は円高バブル拡大に

 下図は、このコーナーでも何度かとりあげてきた円の総合力を示す実質実効相場の5年移動平均線からのかい離率です。これを見ると、2007年後半にかけて、5年線からのマイナスかい離率が、これまでの最大圏に達したところで反転、その後は急速に縮小してきたことがわかると思います。

 5年線を、過去最大規模で下回ったということは、行き過ぎた円安が限界に達したということを示しています。そしてその後、マイナスかい離率が縮小してきたということは、行き過ぎた円安の修正が展開してきたことを示しています。

 ところで、重要なことは、円の実効相場は最近にかけてついに5年線を上回ってきたということです。5年線との関係でいえば、これは、行き過ぎた円安の是正が終わり、今度は一転円高の行き過ぎを拡大し始めているということになるでしょう。

 私は、円高には大きく分けて2種類あると思います。一つは、行き過ぎた円安の修正で起こる円高、そしてもう一つは円高の行き過ぎを拡大していく中で起こる円高です。前者を第1段階、後者を第2段階とすると、第1段階はすでに終わり、第2段階に移っているということになると思います。

 これをやや大げさに、「円安バブル」、「円高バブル」といった言葉を使って説明すると、すでに「円安バブル」は是正され、今は「円高バブル」拡大局面に移っているということになると思います。

 最近、セミナーなどで、「自分の身の回りから円が買われることが実感できない」といったご意見を聞くことがあります。ただそれも、今が「円高バブル」拡大プロセスだと考えれば、辻褄は合うのではないでしょうか。

 私はこのコーナーで言い続けていますが、相場は行き過ぎるのが常であり、そう考えればファンダメンタルズで実感できない円高ということもありうるということになると思います。

ドル安・円高基調は終わらず
80円割れの可能性もあり

 ところで、私が言うとおりに、行き過ぎた円高が拡大しているとして、それは今後どこまで進むかを考えてみたいと思います。それを考える上で、ドル/円と購買力平価(PPP)の関係を見てみましょう。

 下図でわかる通り、ドルは1980年代後半から購買力平価(日米卸売物価基準)より割安圏で推移するのが基本となってきました。ところで、その中において最大の割安となったのは1995年で、実に4割を超える割安となりました。次に大きな割安となったのは1987年でした。

 ただし、こんな具合に、購買力平価よりドルが3割以上の割安になったのは、1973年の変動相場制移行後では上述の2回しかありませんでした。

 実は現在の購買力平価は110円程度です。したがって110円からドル割安が3割以上に拡大すると、1995年に記録したドルの対円最安値、80円を割れる計算になるわけです。

 このように、今回ドルが80円を割れることになれば、それは史上2回しかなかった購買力平価から3割以上のドル割安になることと同じ意味になります。だから、80円を割れるかどうかは、対円でのドル安「トップ2」に匹敵するか、それを上回るようなドル安が今回展開すると予想することに等しいでしょう。

 9月のリーマンショック以降、米政府は政策を総動員し、ドルの政策金利はついにゼロに接近し、財政赤字は激増の見通しになっています。

 財政はドルの信認を示すものですから、その赤字が激増することは、ドルの信認を揺るがすものとなります。このような要因のドル安圧力を、ドルはまだ消化し切っていないのではないでしょうか。 

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