製造業は人件費を含めさまざまなコスト削減の努力をしてきましたが限界があります。しかし製品出荷後のコストについてはまだ余地がある。多くの企業が第三者に任せきりで大きな課題になっていた「物流の最適化」をしていこうと。それが「バリュー・ネットワーキング」構想です。

 当時は、デフレのど真ん中だったこともあって、宅配便市場は値段を下げて数量を増やす激しいダンピング競争になってしまっていた。そこからどう脱却するか。あるいは身を削る競争になっても他社がついてこれないぐらいに徹底的にコスト構造を変えるかを考えていた。「バリュー・ネットワーキング」構想が立ち上がったタイミングが、デフレ脱却を政策の柱にした第二次安倍政権のスタートとほぼ同時だったことはラッキーでした。

 われわれは2000億円の予算でネットワーク構造をつくり変えるという大きな投資をやってきましたが、東京オリンピックの開催が決まったこともあって、同規模の投資だと少なくとも1.5倍はかかったでしょう。その点で常に先を見据えて戦略を考えていたが故に、投資判断をする意思決定のタイミングはよかったと思います。

【経営の時間軸】
長い時間軸でも揺らがないグランドデザインを描く

松江 木川さんが社長になられる直前から長期的視野で成長戦略を描かれて、その後はどのようにPDCAサイクルを回してこられたのですか。毎年ローリングをしてきたのでしょうか。

木川 以前は、宅急便が伸び盛りで3か年計画はネットワーク投資を追加してやりながらも、常に超過達成していました。だから3か年計画の数字にこだわるという風土がやや弱かったのです。私がヤマトグループに入った頃には3か年計画は常に未達の状況でしたが、それでも3か年計画より単年度計画に軸足が置かれていました。だから中期計画でも計画した数値にこだわることを、かなり意識的にアピールをしてきたつもりです。

 そして、2019年がちょうど100周年ということもあって、単に「10年後」というより「100周年」はインパクトがありますから、2011年に100周年に向けた9か年にわたる長期計画を初めて策定しました。2014年4月にちょうど中間の3か年計画に入ったので、今年度から本格的にローリングを始めました。最初の3か年である昨年度までは、管理会計の仕組みとか、あるいはKPI(重要業績評価指標)にこだわるなど、そういう視点でも取り組み始めました。

 今回からは、ローリングしながら常に先行きの3年間を見ていきます。そこで最終ターゲットを2019年の100周年に置く。そこに至るまで3年ごとに、2019年に「これを実行しよう」と、社内で共有をしています。そして投資家の皆さまに対しても、指標としてコミットしているものがいくつかあって、「宅急便のマーケットシェア50%」「ノンデリバリーの営業利益のウェイト50%」「海外の売上比率20%」「ROE11%」の4つについては、既にコミットしています。しかし、そこを意識せずに道なりでいって、残り3年でそれができている保証は何もない。むしろ乖離するかもしれない。

 2019年に目標数値を達成するために、毎年、次の3年まで数字を伸ばしながら途中経過をチェックし、アクションを早く起こせるようにする。そのアクションを起こすのが2019年の長期計画のターゲットをこだわる意味であり、だから毎年アクションをブラッシュアップしています。