本連載の「第2回」で、デジタルとインターネットがクリエイティブ産業に及ぼす影響と、それに応じてクリエイティブ産業の側でビジネスモデルを進化させる必要性を概観しました。今回は、そのケーススタディとして、音楽産業の現状を取り上げたいと思います。
そもそもデジタルとインターネットは、音楽産業にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。これまで音楽ビジネスは、アルバム(CD)の売り上げを最大の収益源としてきましたが、違法コピー/ダウンロードによってCD売り上げがどんどん縮小し、音楽産業は世界的に大きな苦境に陥っています。
日本を例に取ると、CDの売り上げは1998年の6000億円がピークでしたが、その後どんどん売り上げが減少し、2007年には3300億円にまで縮小してしまいました。CDの売り上げだけで考えると、たった9年で市場がほぼ半減してしまったのです。
その一方で、1998年には存在しなかった音楽のデジタル配信(インターネットと携帯)という新たな市場が立ち上がりました。しかし、音楽配信の市場規模は2007年で750億円足らずしかありません。
即ち、デジタル配信の増加分では、CD販売の減少分をとても補えないのです。合計すると2007年の音楽の売り上げは4000億円となり、僅か9年で音楽の市場は2/3に縮小してしまったことになります。
そして、同様の事態が世界中で起きています。例えば、米国のCD売上は1999年の130億ドルをピークに、2007年は75億ドルまで減少しました。ちなみに、2007年の売上は前年比で19%も減少しています。
ある調査によると、米国のインターネット上を日々流通する音楽のうち、正規(有料)ダウンロードは20曲中1曲しかないそうです。それ位に違法ダウンロードが横行しているので、そうした減少は当然です。
このように、音楽産業はデジタルとインターネットにより破壊的な影響を受けていますが、これから同じことが他の(デジタルと親和性の高い一部の)クリエイティブ産業でも必ず起きます。音楽は、デジタルのデータ量の少なさと、国民にとって最も身近なエンターテイメントという特性から、影響を最も早く受けたのです。