市場の覇権争いの決着が、店頭から法廷へと持ち込まれることになった。ノンアルコールビール市場でトップシェアのサントリーホールディングス(シェア38%)が、猛追する第2位のアサヒビール(同33%)を特許侵害で訴えたのだ。
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米アップルと韓国サムスン電子の特許訴訟合戦など、国境を超えての特許をめぐる争いは珍しくない。しかし、国内メーカー同士の争いはこれまで少なく、訴訟の行方が注目を集めている。
サントリーは今年1月、自社の特許権が、アサヒの「ドライゼロ」に侵害されているとして、商品の製造や販売差し止めを求めて、東京地方裁判所に提訴した。
一方のアサヒも引き下がる様子はない。「サントリーの特許は無効」(アサヒ)として、特許無効審判の請求も辞さない構えだ。
今回、両社の争点は、サントリーが取得した特許の「進歩性」について、である。一般的に言って、特許を取得するには、その申請する発明が、業界内の専門家でも容易に追随できないほどの先行技術であることが求められる。つまり、誰でも思い付くような中身では、特許など取得できない。
実際に両社の言い分を聞いてみよう。2013年にサントリーが取得した特許とは、エキスやペーハー(pH)値、糖質の含量を一定の範囲内で調整したものだ。「ノンアルコール飲料でビールに近い飲み応えをようやく実現できたため、特許を申請した」(サントリー)と、研究の成果を強調する。