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【特集・クラウドと、どう向き合うか(3)】

なぜ富士通は、自社の全システム
1万3000台のサーバをクラウドへ移行するのか

松岡 功 [ITジャーナリスト]
【第82回】 2015年3月25日
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今後5年間で社内システムを
次世代クラウド基盤に移行

 こうしたクラウド事業を展開する一方で、富士通は今年2月、国内外のグループ企業で稼働中の全ての社内システムを次世代クラウド基盤に移行することを発表した。約640システム(サーバ数:約1万3000台)が対象となる。今後5年間で移行を完了する予定だ。

 同社が次世代クラウド基盤へ移行するのは、グループ企業で稼働しているレガシーシステムから最先端のシステムを含む大規模かつ複雑なシステム群を、ビジネス環境の変化に柔軟に即応可能なシステムへとモダナイゼーションするとともに、さらなる効率化を目指すのが狙いだ。

 これにより、同社グループ全体として5年間で約350億円のTCO(Total Cost of Ownership)削減を見込むとともに、移行で培ったスキルやノウハウをリファレンスモデルとして、顧客へのソリューション提案やシステム構築・運用に活用したい考えだ。

 社内システムの移行先となる次世代クラウド基盤は、オープンソースのクラウド基盤構築ソフトウェアである「OpenStack」をベースに開発を進めているという。これについても、社内システムを移行するとともに、一部の顧客と実証を行いながら継続的に機能開発を進め、2015年度中に顧客への提供を開始する予定だ。

 小田氏は次世代クラウド基盤への移行について、「これによって、インテグレーションをはじめ大規模なシステムの移行や安定性の確保といった面で、相当なノウハウを蓄積できると考えている。しかもOpenStackを適用してこれだけの規模のクラウド基盤を構築した例は聞いたことがない。したがって、蓄積したノウハウは当社にとって大きな強みになると確信している」と語った。

 ちなみに、富士通はOpenStackをこれまで自社のクラウドサービスに採用しておらず、今回の社内システム向けが初めてとなる。OpenStackベースのクラウド基盤サービスは、IBMやHPなどがすでに手掛けているが、富士通も本格的に参入したことで、エンタープライズ市場でのOpenStack利用が一層加速しそうだ。

 さらに、レガシーシステムを含めた次世代クラウド基盤への移行は、同様のレガシーシステムを保有している大手企業にとっても格好のモデルケースとなる。その意味でも、富士通が移行計画をスムーズに進め、自らクラウド事業の未来を拓くことができるかどうか、大いに注目される。

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松岡 功
[ITジャーナリスト]

まつおか・いさお ITジャーナリストとして複数のメディアにコラムや解説記事を執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などで記者およびIT系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。

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