自分の本質に気づくと楽になる

石坂 その状態からどうやってよくなっていったのですか?

小島 当時、労働組合の執行委員をやっていて、社内制度の改善をしていました。
 たとえば、1日単位でしかとれなかった看護休暇を半日単位で取得できるようにした。すると、予防接種を受けさせて午後から出社することが可能になる。
 そのときにまわりからとても感謝されたんです。アナウンサーとして何百万人に向かって話しても「助かった」と言われたことは一度もない。私は人から「助かった」と言われることに喜びを感じるのだとわかった。それで、ちょっと光が見えたんです。

石坂 自分の本質が見えると楽になりますよね。

小島 石坂さんは、自分が何を喜びとするのか、何を価値とするのかがわかっていたから、地域からバッシングされても、社員がどんどん辞めていっても、お父さんに罵倒されてもふんばりがきくんじゃないかな。

石坂 そう思いますね。自分なりに一生懸命やっていても、父から「2代目は俺が会社にいるうちは楽だ」とか、「2代目はいなくても3代目がいれば会社はなんとかなる」などと社員の前で言われると傷つきます。

小島 それはキツいですね……。

石坂 父の性格を考えてみて、「変えるのは難しい」と思ったんです(笑)。変えられないなら、自分が変わっていけばいいと思った。そこで父がやってこなかった部分、営業面や広報面で、会社を改善して自分の場所をつくってきました。

小島 石坂さんは小さい頃からはっきりとものを言うタイプでしたか?

石坂 ええ。

小島 何か理由があるのでしょうか?

石坂 高校卒業後にアメリカに留学したときに、ルームシェアしたアメリカ人の友だちがみんなはっきりものを言う。それを見て、自分もはっきり自己主張しなくちゃ、と思いました。

小島 はっきり物を言いつつ、あきらめずに関係もつくっていく。特にダイオキシン騒動後、何をやっても会社の信頼が回復しないときに、地域とのコミュニケーションにエネルギーを注いでいく。これはどうして?