子どもたちの世代には
「ゴミ屋さん」と呼ばせない!

石坂 母の口癖は「人にはそれぞれ理由がある」でした。おそらく母は父親に始終罵倒されていたんだと思う。それで、「人にはそれぞれ理由がある」と。 そのおかげで、地域の方になかなか理解を得られなくても、その理由を感じていかなくてはならないと。

小島 「産廃業者は危険だ」という人には、何か理由があるだろうと考えて、地域の人が安心できるような会社のあり方を考える。社屋がきれいだったり、社員がきちんとしていたり、プラントが見学できたりと変えていく。相手の不安を想像してそれを和らげる工夫をすれば、関係が変わっていくんですね。

石坂 見てもらって意見を聞き、どこをどう変えればいいかを教えてもらうんです。

小島 対話って重要だけど、めんどうくさい部分もあります。そこにエネルギーをかけるくらいなら儲かることをやったほうがいいという人もいる。
 周囲の人たちが石坂産業のことを理解してくれたからといって利益が上がるわけではない。そこを根気強くやっているのはなぜですか?

石坂 子どもの頃、親の会社が「ゴミ屋さん」と呼ばれていて、私には後ろめたさがありました。そんな思いを自分の子どもにはさせたくない。それには会社のイメージを変える必要があったし、もっと言えば、産廃業界全体のイメージも変えていこうと思っています。 

<著者プロフィール>
埼玉県入間郡三芳町にある産業廃棄物処理会社・石坂産業株式会社代表取締役社長。99年、所沢市周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているとの報道を機に、言われなき自社批判の矢面に立たされたことに憤慨。「私が会社を変える!」と父に直談判し、2002年、2代目社長に就任。荒廃した現場で社員教育を次々実行。それにより社員の4割が去り、平均年齢が55歳から35歳になっても断固やり抜く。結果、会社存続が危ぶまれる絶体絶命の状況から年商41億円に躍進。2012年、「脱・産廃屋」を目指し、ホタルや絶滅危惧種のニホンミツバチが飛び交う里山保全活動に取り組んだ結果、日本生態系協会の JHEP(ハビタット評価認証制度)最高ランクの「AAA」を取得(日本では2社のみ)。
2013年、経済産業省「おもてなし経営企業選」に選抜。同年、創業者の父から代表権を譲り受け、代表取締役社長に就任。同年12月、首相官邸からも招待。2014年、財団法人日本そうじ協会主催の「掃除大賞」と「文部科学大臣賞」をダブル受賞。トヨタ自動車、全日本空輸、日本経営合理化協会、各種中小企業、大臣、知事、大学教授、タレント、ベストセラー作家、小学生、中南米・カリブ10ヵ国大使まで、日本全国だけでなく世界中からも見学者があとをたたない。『心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU』(日本テレビ系)にも出演。「所沢のジャンヌ・ダルク」という異名も。本書が初の著書。