人命よりも経済合理性が優先?
科学的根拠なき“証拠”を提出した銀行側

高松康雄さんの妻優子さん(当時47歳)は、行方不明。高松さんは潜水士の資格を取り、自ら海に潜って捜索し続けている
Photo by Y.K.

 七十七銀行女川支店の津波被害の裁判は、自然災害に対する職場の備えのあり方を問うものだった。他の東日本大震の他の裁判と違い、海から約100メートルにあった支店は、津波ハザードマップ(津波浸水予測図)で津波が到来することが予想されていたエリアだ。このことから、1審、控訴審とも、ハザードマップの読み取り方や備えの妥当性が、主に争われた。

 2014年2月に出された仙台地裁(斉木教朗裁判長)の1審判決では、原告にとっては厳しい判断が示された。

 企業には従業員に対する安全配慮義務があるとしたものの、企業の「経済合理性」という観念が取り上げられ、「使用者は最悪の事態を常に想定して高い安全性を労働者に対して保障すべきだとは言えない」とした。

 また、支店の目の前に町指定の津波時の指定避難場所である高台があったにもかかわらず、そこよりも低い屋上を安全管理マニュアルで避難先に追加していた「屋上プラン」についても、銀行側の主張を全面的に認めて妥当とした。

(参考:「【3.11】七十七銀行女川支店の津波被害訴訟、人命よりも経済合理性が優先されるのか?」

 屋上プランの妥当性の根拠とされたのは、1審の結審で銀行が提出した証拠だった。証拠提出や反論が一通り終わったはずの結審の段階で、被告側は原告が反論できないタイミングであるにもかかわらず、証拠を滑り込ませた。斉木裁判長は、そんな証拠をそのまま採用した。