価値観の共有をしたことで
社員に判断を任せられるように

 この時、私と日高が考えていたことは、たったひとつ。自分たちの価値観を発表し、それを知ってもらうこと。別に賛同されなくてもいいのです。

 社員から、「ああ、この二人は挑戦が好きなんだ」と思ってもらい、「この会社にいるには挑戦しなくてはならない」という私たちの考えが浸透すればよかったのです。さすがにこの時ばかりは、考えが合わない人が出て、もしも辞めてしまう社員がいても仕方がないと腹を決めていました。

 実は、今までも理念は作っていましたが、良さそうな言葉を並べてかっこつけていただけ。自分たちが本当に求める価値観を伝えていなかったのです。私も日高も本気で挑戦する会社になりたいんだということを話し続けました。すると、今回は本気なんだと社員に伝わり、だんだんと挑戦を理解し、自ら挑戦する風土が生まれました。しかも、誰ひとり退職することなく。

 価値観を統一すると何がいいか。それは、誰もがブレることなく判断ができることです。ここでわかりやすい質問をしたいのですが、みなさんならどちらのサービスを採用しますか?みなさんの会社に当てはめて考えてみてください。

A 不具合は多いけれど、最新技術のサービス
B 古いけれど安定したサービス

 究極の選択で、とっても迷いませんか?私たちの会社では、社員全員がAを選択します。それは私たちの会社の価値観である「挑戦」が浸透しているからです。このように社員は選択を迫られた時に、会社に価値観があると、価値観に紐付けて判断することができ、誰もがブレない判断をすることができるのです。

 そして、私も社員の判断に任せることができるようになりました。価値観を発表する前までは、私は、小さなことにも首を突っ込んで、なんでも知りたい!なんでも報告して!と思っていました。それは自分が判断しなくてはならないと思っていたからです。

 当時を振り返ると、社員にとても申し訳なかったと思うことがたくさんあります。たとえば、社員の考えた企画などです。せっかく社員が考えてくれたのに、私があまりにも口出しするので、その提案内容が私の企画になってしまうことがよくありました。私からすればさらに良い企画になったと思い満足なのですが、社員からしたら、もうその企画は自分の企画ではなく、社長の企画です。自分で考えたからこそ実行したかったのに、私の企画になってしまったら、ただやらされているだけ。そんなのやりがいがあるはずがありません。

 でも今は社員に任せられます。それは社員が「挑戦」という価値観に基づいて企画をしているからです。そこがひもづいているからこそ、社員を心から信頼して仕事を任せることができるようになりました。

 それに、その企画が失敗してもいいのです。「挑戦」という価値観に基づいて企画したのであれば、失敗してもそれは社員の経験となり成長につながります。やらされて成功するよりも、自分で考えて失敗したほうが社員は成長するのです。