河合 OECDで働く私の友人のインタビューをビデオで撮影させてもらったら、すべての話が1分間で終わるんですよ。「どうして1分間で終わるの?」と尋ねたら、「1分間で話すトレーニングを受けているから」って。マスコミに向けて発表することも考えて、どんなに難しい長いレポートでも1分間できちっと説明できるようになっています。1分間は意外と長いですよね、いろいろなことを伝えられます。
水永 本当に使い方ですよね。ダラダラ話をしていると、まとまりがつかないままどうやって締めていいのかわからなくなってしまいます。冒頭で構成を考えておかないとダメですね。たとえば、「この3つでいこう」と。
河合 そうですね。最初に構成ができていればなんとか話はまとまりますね。
水永 冒頭に考えておかないと、だいたい失敗します。そういうことも体験しないとわかりません。プレッシャーがある環境でやることもいい練習になります。自分の部屋で1人になって1分間話すのと、人前に立っての1分間はまったく違うわけです。
河合 毎回スピーカーを立たせて話させますか?
水永 立たせます、演壇を使って。だから結構プレッシャーが掛かるんです。
河合 練習する時間を与えてから発表させていますか?
水永 回にもよりますが、ほとんどの回では1ヵ月前にはお題を渡しているので、ちゃんと練習してきますよ。
河合 それだったら、十分ですね。
水永 まあ、できますよね。ただ、手を抜いている人もいるわけです。終了後、「この中で誰の発言が一番おもしろかったか、印象に残ったか、名前を言ってくれ」と、オーディエンスに促します。批判することが目的ではないので、良かった人の名前だけを言ってもらいます。
名前を呼ばれた人は、それなりに人をインプレスしたという事実が残るので、それはなぜかと考えます。反対に、1回も名前が出なかった人は、聞き手をインプレスしなかったということになりますから、「どこが違うのか、自分で考えてみなさい」と伝えています。勉強になりますよ、これは。
悩みの共有をきっかけに
解決策も共有する
河合 社長塾では、ほかにどんなことをされていますか?
水永 ベンチャーファイナンスの教科書を使って学習したり、みんなが学びたい教科書を持ってきてもらうこともあります。私が一方的に教えるスタイルを取らないのもビジネススクール流ですね。順番に担当を決めて、輪読のように説明させていきます。
河合 ここは誰の担当と決めて進めていく。大学のゼミスタイルですね。
水永 それが半分くらいの時間です。あとの1、2時間は、30代のマネジャーが多いので、ビジネスの悩みや成功体験をシェアしようという時間にしています。悩みを言うことはとても勉強になるんですよ。自分の中で整理する必要があるし、他のメンバーが「自分だったらこうする」と助けてくれるので結束も強くなります。お互いに学びの場になるんです。
河合 自分の評価にもつながる可能性もあるので、上司が相手だと悩みを話せないということもあると思います。その点はどうですか?
水永 30歳前後なので、私から評価される人間はいないんですよ。人事制度上、自分を直接評価する人というのは限られています。それから、守秘義務をお互いに課しているんです。ここで話したことは、社内であっても絶対に話してはいけない。もしわかったら、お互いに許さないという約束だよ、と。その掟が一番大事だと思います。それがないと、悩みを打ち明けた日には、足を引っ張られる可能性すらあるわけですから。
河合 たしかに、守秘義務は大切だと思います。それがないと話せません。
水永 最初の1、2回は探り合っていましたけど、徐々に心を開いてきました。それこそ、人によってはプライベートの悩みまで相談する社員もいますよ。
河合 そういう問題は、ある程度、第三者からのアドバイスが必要ですよね。自分だけで全部抱えてもどうにもならないことがある。私もスイスの国際機関でコーチングを受けたのですが、本当にそれによって今のキャリアがあると考えています。有名なビジネススクールの教授ですのでとても説得力があり、外部の人ということで利害関係はないだろうなと思い信用しました。
水永 そうなんですよ。やっぱり言えませんよ。とくに、大人になると言う場所がありませんから。プライベートはともかく、仕事の問題であれば、一緒に考えて解決策が出ることが多いと思います。違う部署からの視点も新鮮ですし、30代くらいだと遠慮なく教え合います。
河合 他部署とのコミュニケーションにもなっているんですね。