ハーバード大学卒業後、マッキンゼー、BIS、OECDなどを経て、現在は京都大学の教壇に立つ河合江理子氏と、ボストン・コンサルティング・グループ、ゴールドマンサックス証券を経て、スター・マイカ代表取締役会長を務める水永政志氏による対談。日本、そして世界を知る両氏から、これからの時代に求められる人材像などが語られた。対談は全4回。

「社長塾」でビジネスに必要なスキルを伝える

水永 コンサルティング会社、外資系企業で働くと当たり前のこととして、「エレベータートーク」があります。1分あるいは3分程度で上司や社長を説得をする練習を、たとえばアメリカの場合は普段から行っているわけですよね。社内で勉強会をするときに、1分間スピーチの練習をしています。

河合 勉強会は、水永さんが自らされるんですか?

水永 時どきですが、「社長塾」のようなものを月1回程度行っています。若手の希望者を集めて、来たい人だけで強制はしません。10人くらいの規模です。そこでは、エレベータートークを毎回させるんですよ、お題を与えて。

河合 たとえば、どんなお題ですか?

水永 たとえば、「1年間の自分のアチーブメントについてアピールしなさい」「この会社をどう変えたらいいと思うか」など、「じゃあ、こっちから1分ずつ話をしてね」と言ってタイマーを回します。

河合 それは私のプレゼンの授業でも使いたいです(笑)。1分間、厳しく計るわけですね。

水永 本当に1分間で切ります。3秒過ぎてもそこで終わりです。1分間スピーチのあとは、2、3時間一緒に勉強します。勉強会のうち、最初の1時間は全社員に公開して、聞きたい人は来られるようにしています。オーディエンスが30人くらい座っているので、1分間スピーチも結構プレッシャーが掛かると思いますよ。

河合 そうですね。

水永 練習ですから、失敗してもいいんですよ。そのあとは非公開にして、勉強会のメンバーだけで、1分間スピーチの良かった点や悪かった点を講評します。負担はあると思いますが、1人も脱落していません。こうした形式は、ビジネススクールではよくやっていますよね。

河合 自分の言いたいことを短くまとめて話すというのはとても大切なスキルだと思います。プレゼンでも長いほうがやりやすいという学生も多いのですが、1分間、3分間、5分間と課題を与えて短くまとめることの大切さもわかってもらいたいと考えています。