河合 海外でも、いい会社はチームワークを謳っています。

水永 ゴールドマン・サックスも、あれだけ個人の技量、結果を重視している会社ですが、あの業界の中では一番チームワークのある会社だと言われているんですよ。

河合 ああ、たしかにそうですね。

水永 他のインベストメント・バンクと比べると、個人の技量ではなくチームでやることを評価するとされています。社是の中にも、そのような話があります。「I」ではなく「We」なんですね。「I did ~.」と言うと怒られました(笑)。

河合 「We did」なんですね。

水永 それは「『We』じゃないのか?」と、逐一直されるくらいです。

河合 そこまでしなければ、スタープレイヤーだけになってしまう。

水永 そうです。金融ではどうしてもスタープレイヤーが出てしまいますが、それでもチームワークをより評価するとはっきり言っています。トレーディングなどは仕方ないですけどね。どの株をいくらで買うかをチームワークでは決められませんから。ただ、ファンドマネジメント、株式営業、債券営業はとてもチームを重視します。

横で切る組織が
社内のチームワークを強化する

河合 ゴールドマンでは、水永さんはスタープレイヤーだったわけですよね?

水永 スターかどうかはわかりませんが、営業成績という意味ではある程度の実績が出ていたかもしれません。

河合 営業成績で1番になってインセンティブの世界で働いていた人が、自分の会社ではインセンティブをあえて入れないのはおもしろいですね。

水永 不動産業界はインセンティブが強い業界だと思います。ただ、だからこその足の引っ張り合いや情報の隠し合いが生じてしまうリスクもあるでしょう。

河合 同じ会社でも、支店同士で競争という話はよく聞きます。

水永 セクショナリズムによる情報の私物化が起きてはいけないと思います。自分の引出しに情報を隠し込んで、隣の人にも教えない。相談なんか絶対しないとなれば、会社のためにはなりませんから。

 会社として考えれば、1人がお客さんを持っていて、もう1人が物件の情報を持っていると、2人がくっつけばそこにビジネスが生まれます。でも、その2人が競争して、互いの情報を共有しなければ、本来はビジネスになるものがなっていないケースはたくさんあります。

河合 それを取り除くためにいまの形を採用したんですね。

水永 はい。そのために、組織の設計もそうした問題がなるべく起こりにくいようにしているつもりです。

河合 まさにスター・マイカの強さの秘密なんですね。そうした企業カルチャーは大切だと思います。働きやすい会社に入りたいと言われますが、そういうことは入ってみないとわかりませんよね。

水永 わかりませんね。この会社ではノルマや社内で怒ることも禁止しています。外から来た人はみんな喜びますよ(笑)。「不動産業なのに怒鳴り声が聞こえないんですか?」と。業界的には怒鳴り声は多いみたいです。

河合 そうなんだ、やっぱり(笑)。

水永 不動産業に限りませんけど、やっぱり、ある程度、営業が強い業界は怒鳴っていますよね。それはやめようよ、と思いますね。

次回更新は5月20日(水)を予定。