水永 話が違う方向にいっていると私が思えば、「私の意見は違うよ」と言う場面もありますし、「水永さん、そういう経験ないんですか?」と向こうから求めてくる場合にも「ボスコン時代はこんな苦しいことがあった」などと、自分の話もします。

河合 仕事の悩み、個人的な話を共有するのは、よほど信頼感がないと難しいかもしれませんね。だからこそメンター制を導入する企業も増えてきているのでしょう。

水永 そうかもしれませんね。

アルコールに頼らなくても
悩みは相談できる

水永 日本人同士だと、シャイだからなのか、すぐに冗談にしてしまうんですよ。悩みを真剣に言うことが恥ずかしいとされるので。

河合 お酒を飲まないと言えない。

水永 そうですね、赤提灯で酒を飲んで、上司と愚痴を言う。

河合 時間がもったいないと思います。

水永 2人でやっても何も変わりません。多くの場合、酔っ払った上司から、さらに上の上司の悪口を聞いているだけで終わってしまいますし(笑)。

河合 効率が悪いですよね。

水永 私もモチベーションが下がりましたね。毎晩のように赤提灯に連れて行かれて、人の悪口や会社への不満を延々聞かされましたから(笑)。

河合 私も国際機関に入ったばかりの時、アメリカ人の上司が私の部屋に来て、組織の悪口を言うんです。こちらは新しいチャレンジで盛り上がっているのに、本当にやめてほしいと思っていました。

水永 でも、私のいたボスコンでもそうですが、河合さんのいたマッキンゼーなんかは意外と少ないんじゃないですか?ゴールドマン・サックスもそんなにありませんでした。

河合 プロフェッショナル・ファームは、結果だけですからね。プロフェッショナルという自覚を持った人も多いですし、愚痴で時間を無駄にすることは少ないと思います。その暇があったら、実力をつけて、ネットワークを広げて外に出る努力をするでしょうね。

水永 いろいろ言っても、仕事の結果次第ですからね。

河合 結果が数字ではっきりしない国際機関のような組織や一部の日本企業では、人間関係や社内ポリティックスで評価が決まってしまうことがあるのかもしれませんね。

水永 そうですね。でも、私は結果だけで評価される会社を経験していながら、この会社では強いインセンティブを設けていないんですよ。

河合 それは、意識されて実施したことですか?

水永 そうです。くだらない足の引っ張り合いとか、成績の奪い合いをしているところを見てきたので、そういうことがない会社のほうが日本人に合うのではないか、という私の考えです

河合 その場合、モチベーションはどうやって保っていますか?

水永 外資系企業の中にもありますが、この会社ではチームワークを評価します。1人ひとりの成績よりも、たとえば、仕入れチームが目標を達成したら、みんなを評価していきます。もちろん、上司からの定性的な評価による加点もありますが、いくら儲かったからいくらのボーナスというダイレクトな評価は行いません。そもそも、この成績は誰に帰属しているのか、この利益は誰のおかげなのかというアカウントもありませんから。チームワークを促進しています。

河合 それはいいですね、働きやすいと思います。

水永 日本ではそちらのほうが向いているんじゃないですかね。