6月1日から改正薬事法がスタートし、登録販売者の登場によって販売チャンスが広がったOTCだが、蓋を開けてみれば「売上高は期待したほど伸びていない」(家電専門店)、「売場管理の手間やコストが売上に見合わない」(SM)という声も少なくない。消費そのものが盛り上がりに欠けるなかで、大衆薬での商機拡大を狙い現在も売場新設や営業時間延長などを検討する企業がある一方で、売場展開に必要なコストに見合う売上が確保できないとして、当初の販売拡大シナリオが描けない企業が多いのが実情だ。
そのような中、地盤の九州をはじめ、全国でディスカウントストアを展開するトライアルカンパニー(福岡県福岡市/永田久男社長)は、6月1日より、“九州初”と銘打ち24時間営業によるOTC販売を開始している。24時間OTC販売を実施しているのは、福岡市郊外、糟屋郡粕屋町で展開する「トライアル粕屋店」。同店では、2008年12月より薬種商販売業として、資格者1人を置き、医薬品の取り扱いを開始した。
薬事法改正による新資格者・登録販売者の登場を受け、同店では薬種商から移行する資格者を含めた3人の登録販売者を確保、6月からは24時間営業をスタート。ただ、1人1日10時間勤務の3交替制で、担当者の休日には、本部からの応援者で対応するというオペレーションを組む。3人という人数は24時間365日営業を実施するための最低ラインで、決して余裕があるとはいえない人員のやり繰りだ。
このような厳しい台所事情はトライアルだけが抱える問題ではないが、24時間営業を掲げるトライアル粕屋店としては、営業時間延長に見合う数値をどうにかして確保したいところだ。同店では全社的にも限られた店舗でしか展開していないポイント10倍キャンペーンを実施。医薬品210円以上を購入した来店客を対象に、他の売場で購入した商品分も含め、全金額に対して10倍のポイントが付与される仕組みだ。
ポイント10倍の効果が、果たして24時間営業の認知度向上と売上高拡大に寄与するのかどうか |
医薬品を210円以上購入しない客に対しては通常のポイントしか付与されないため、食品や雑貨等を購入した客の中には、あえてOTCコーナーに立ち寄り、ドリンク剤など210円以上の商品を購入後、10倍ポイント獲得の条件を満たしてから一般レジで商品の清算を行う客もいる。
このようなカード販促によるOTCへの強力なサポートからは、どうにかOTC販売を成功させたい思いが伝わるが、なかなか実情は厳しいようだ。
トライアル粕屋店の周囲には、ミスターマックス、コスモス薬品、マイカルサティなど、徒歩5分程度の圏内に、いずれもOTCを取り扱う店舗が点在する。その中で24時間営業はトライアルのみだが、いまのところ24時間営業によるメリットを享受できるほどの実績は上がっていないようだ。逆に深夜時間帯の万引きなど、高額商品が多い化粧品などでの売場管理に新たな課題が持ち上がっている。改正法施行から1カ月、各地で同様の試行錯誤が続いているが、企業によっては、すでに撤退か継続かを含めた究極の選択に迫られる企業も出てきている。
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