「ウチは、設備投資もしているし、経営コンサルタントだって入れているぞ。川西君、ほかに何をしたらいいんだ」

 Y社長からそう聞かれた私は、A社の社内の様子を調べてみることにしました。

 私はまず、ほかの会社でもするように、従業員の健康状態をチェックすることにしました。その結果、残業時間の多い社員、生活習慣病や気分の落ち込み、睡眠障害などを抱えている従業員がかなりいることがわかったのです。

 「従業員たちの健康状態を見てください。基礎体力がないですよ。これはオーバーワークです」

 私がそう言うと、Y社長はこう反論しました。

 「でも、従業員を増やしても、忙しいときはいいけれど、仕事が減る時期には余ってしまう。コストがかさむだけだ」

 「違います。今いる従業員の数に合った仕事をすればいいのです」

 じつは私は、人事部を通して各事業部の部長にあるお願いをしていました。それは、従業員と仕事量のバランスに関する調査。各事業部でオーバーワークになっていないかを調べてもらったのです。

 その結果、開発部門のスタッフ数に対して、営業マンが仕事をとりすぎていることがわかりました。というのも、それまでY社長は、売上げを伸ばすために、営業スタッフの尻を叩くことばかりしていたからです。

 私は、ほかの会社でも、ココロのケアを依頼されるとまず、従業員の数と仕事量がマッチしているかどうかを尋ねることにしています。これは、考えてみれば当たり前のことですが、そういう考えが抜け落ちてしまっている会社は多いものです。開発や製造の能力には限界があるはずなのに、営業は仕事ばかりとってきてしまう。コンサルタントも、売上げを伸ばすために、仕事のとってこられる組織にする。いわば、営業マン重視のコンサルティングです。

 そんなオーバーワークの組織では、お客様からのクレームも増えます。納期が遅れ気味になり、質も落ちるのです。そんな会社の場合、お客様からのクレームに効果的に対処するには、クレーム処理担当者のスキルを上げることよりも、開発者1人にかかる仕事の量を減らすのが優先かもしれません。過労や過剰な残業というのは、会社のジョブフローや従業員本人の仕事に対する向き合い方を根本から考え直さないかぎり解決しません。だから私は、Y社長に、「営業マンのみを増やす拡大路線をやめてはどうですか」とアドバイスしたのです。