「営業やりたくないな」という気持ちを払しょくする方法

青木 私は早く成果を出してリーダーになり、部下に仕事をやらせたかった(笑)。現場にいながら、「こんなの長くやっていられないな」と感じていたので頑張った結果、昇進。しかし、もっと忙しくなってしまった(笑)。

 そんな私が営業という仕事に前向きになれたのは、営業は人に喜ばれる仕事だと、価値観が変わっていったことが大きいです。

 企業では「営業に対して悪い考えを持っていようが結果さえ出せばOK」という風潮がいまだあります。しかし、これでは営業マンは「つらい」「しんどい」と感じるだけで、お客様と会社のためになる営業にならないのです。

嶋津良智(しまづ・よしのり)日本唯一の「上司学」コンサルタント。大学卒業後、IT系ベンチャー企業に入社。同期100名の中でトップセールスマンとして活躍、その功績が認められ24歳の若さで最年少営業部長に抜擢。就任3ヵ月で担当部門の成績が全国ナンバー1になる。その後28歳で独立・起業し代表取締役に就任。M&Aを経て2004年5月株式上場(IPO)を果たす。2005年次世代リーダーを育成する教育機関、リーダーズアカデミーを設立。2007年シンガポールへ拠点を移し、業績向上に寄与する独自プログラム「上司学」が好評を博し、世界中で2万5000人以上のリーダー教育に携わり、講演・企業研修・コンサルティングを行う。また、ベストセラー著者兼ベンチャー経営者仲間の5人で、チャリティーのビジネスセミナーを世界14都市で開催。2013年日本へ拠点を戻し、現在は一般社団法人日本リーダーズ学会を設立。世界で活躍するための日本人的グローバルリーダーの育成に取り組む。

嶋津 「押し売り」という言葉がありますよね。営業マンが強引に売って、消費者センターにクレームが入って、悪い部分だけニュースになる。営業とは必要のないお客様に強引に売る行為という負のイメージが少なからずありました。全体的には少ないのにもかかわらず、「欠けたドーナツ」の話のように、悪い部分にフォーカスされてしまい、営業は人のために喜ばれる仕事というイメージがしにくかったのかもしれません。

青木 「営業マンは足を棒にして稼げ」という名残がまだあります。企業はそういう人をヒーローにしたくなるのも悪い慣習です。

嶋津 私のいた会社もそうでした! 多少やり方が悪くても、売れた人間を評価する風潮がありましたね。「確かに結果を出しているけど……」と仲間うちで話していましたが、そういう人はいずれいなくなっていました。

 私は営業だろうが経理だろうが、「仕事」と捉えていました。どんな仕事もたいへんです。そんななか、嫌だからという理由だけで、もし、逃げるように営業の仕事をやめてしまったら、一生、何の能力もない人間で終わってしまうのではないかという危機感がありました。

 たまたま、父から「石の上にも3年だ」と言われました。1つのことを3年続けられない人間が、どうなるのか、と。

「嫌になったら辞めていいや」と思うか、「いるあいだだけでも頑張ろう」と思うか、同じ3年でも変わってきます「どうせやるならしっかりやろう」と思い、工夫が生まれました。

 いつ辞めてもいいやと思うと、ネガティブなことしか考えなくなります。そうなると、自分を正当化して、ポジティブなことが言えなくなるのです。

青木 営業という仕事は人生における戦略がすべて詰まっています。基本、コミュニケーションなしに成立しないのが「仕事」ですからね。