韓国勢の猛烈な攻勢によって、テレビ事業で一敗地に塗れるような苦境を味わった日本の電機メーカー。ようやく赤字基調からの脱却が見えてきた今、生き残りをかけて、ソニー、パナソニックは今後どう事業をかじ取りしていくのか。部門のトップが報道陣に語った。(週刊ダイヤモンド編集部 中村正毅)
アンドロイドテレビが人気
北米事業は軌道に乗り始めた
■ソニービジュアルプロダクツ 高木一郎社長
Photo by Masaki Nakamura
──テレビ事業が10年連続赤字になった要因をどう総括しているか。
「改革をやりきれなかったということだろう。そのときどきで経営者は最善を尽くしたと思うが、一貫した戦略でやっていれば、ここまで長引かなかったか部分もあるとみている」
──テレビ事業が足元で抱えている課題とは何か。
「11年ぶりに黒字になったからには、それを継続していかなければいけない。経営を預かった身としては、安定収益が目指す方向だと考えている。10年間も連続して赤字だったので、安定収益などとというなと言われるかもしれないが、今年度の業績を見て、安定収益でいけるのではと思われるようにしたい」
──今後赤字になるリスクはどの程度あるのか。
「販売会社の構造改革については、米国でダイレクトショップをさらに絞り込むなど、ほぼやり終えた。ただし、改革した人員規模でいかに効率よくビジネスを回すかについては地域ごとにまだ温度差がある。最適なやり方をつくりあげるのはこれからだ。役職としては販売プラットフォームの担当でもあり、販社の責任も担っている」
「また生産コスト面でいえば、液晶パネルはバックライトを含めたモジュールで買うと、単価が高い。部品の在庫、金額、リードタイムがどうしても気になる。そのためパネルそのものをだけを買い、自社内でほかの部品を調達して組み上げるかたちに順次切り替えている」
──パナソニックやシャープが北米でのテレビ事業から事実上撤退する方針を示している。ソニーは北米でシェアが10%に満たないが、厳しい状況でも引き続き事業を継続する狙いは何か。
「北米は大きな市場だ。安いものはウォルマートやターゲット(いずれも米大型量販店チェーン)でがんがん売れるが、我々は1500ドル以上のテレビを、限られた販路、限られた店のみで売るという方針に14年度から転換した。特にベストバイ(米家電量販店チェーン)でのショップインショップの展開は、350店舗ではじめ、売り上げが前年の4倍になった。その成功をさらに広げていく。そういう意味では北米事業は軌道に乗り始めたとみている」
「ベストバイとそうした戦略を採れているのは、韓サムスンと我々だけだ。製品そのものでいえば、画質、音質、佇まいという3つに加えて、米国では(アンドロイドOSを採用した)アンドロイドテレビが使い勝手の良さで受けている。その意味でも商品力が他社に比べて認めてもらえるようになっている」