橋下徹が引退できない理由【その1】
都構想否決は「民主主義」の宿命だから

 まず、橋下徹が引退できない第一の理由は、都構想の否決は、橋下氏の責任というより「民主主義」の宿命によるところが大きいと思うからだ。

 大阪都とは、ひとことで言えば「大阪市をなくして5つの区に分ける」というもの。そのことにより、大阪府と大阪市の権限争いに終止符を打ち、「大阪」を1つに統一することで無駄をカットすると共に、都市計画を一元化しようという行政の仕組みの改革だ。政令指定都市を解体し、都道府県の名称まで変えてしまおうというのだから、明治維新以来の大改革と言っていいだろう。

 だが、この改革によって「得をする」のは誰なのだろう。

 政令指定都市を解体して特別区を設置してしまえば、当然「大阪市」としての行政上の一体感はなくなるし、権限・財源も大阪府へ移行する。つまり、大阪市民にしてみれば、どちらかと言えばマイナスの改革なのである。ただ、そのことによって「大阪」が全体として効率的になり、いわば「グレーター大阪」(大きな大阪)が東京都と並ぶ大都市として存在することになるというのが、大阪都構想だったはずだ。

 大阪市に納められていた税金(固定資産税など)は、大阪市が廃止されれば大阪府に納められ、特別区に再分配される仕組みとなる。反対派の論客は、特別区の財源の多くを占めることになる「財政調整交付金」の20%(おおよそ2200億円)ものお金が広域サービスの名の下に特別区の外に使われることになる、と指摘していたが、これはその通りだろう。

 この批判に対して、大阪維新の会は「特別区内の広域サービスに使う」「府に移る広域行政の事務や市債の返済にあてる」と説明したが、特別区内にとどまるならば、そもそもそれは「広域サービス」とは呼ばない。もし、大阪市以外にお金が流れないなら、それこそ大阪市を廃止する意味がない。

 橋下徹市長も、街頭演説などで懸命に「大阪市のお金は外に流出しない」と説明したものの、それはちょっと無理がある話だ。つまり大阪都構想は、大阪市民にとって「直接的には」損をする話だということは否定できない。

「グレーター大阪」(大きな大阪)が、大阪府、ひいては日本全体にとって得になる話だとすれば、「直接的には」大阪市民にとっては損だと感じる人が多くて当然のことだ。「あなたにとってマイナスのことをしますが、いいですか?」と尋ねて「はい、どうぞ」と言う人は少ない。その時点で、「大阪市廃止」を大阪市民に問うことは、相当に分が悪い戦いと言えよう。

 この不利な状況の中で、69万4844人の支持を集め、僅差に追い詰めたというのは、責任をとるどころか、むしろあっぱれなことではないか。