社会保険労務士、税理士・公認会計士、司法書士、弁護士などの「士業」は、資格者増や競争激化などにより業界内の二極化が進んでいる。厳しい経営環境の中で「選ばれ続ける事務所」になるためには何が必要か。士業の経営指導で抜群の成功率を誇る船井総合研究所の経営コンサルタントが、業界の現状と差別化のポイントを語る。連載の第3回は、司法書士事務所の経営コンサルタント・真貝大介氏に話を聞いた。
――まず、司法書士事務所の経営環境について教えてください。
司法書士の業界は「不動産登記」がマーケットの8割を占めているため、不動産の売買が盛んになれば仕事が増え、落ち込めば仕事が減るという構図になっています。この1~2年は消費増税前の駆け込み需要やアベノミクス効果によって不動産登記も好調で、2017年4月に消費税が10%に引き上げられる直前にも駆け込み需要が期待できるでしょう。
しかし、長期的に見ると経営環境は厳しくなっています。この10年間で司法書士の登録資格者数が約20%増えているのに対し、不動産登記件数は約30%減っています。すなわち、1人あたりの仕事が減り、パイの取り合いが激しくなっているのです。
もともと司法書士事務所には、経営が安定しにくいという業界特性があります。税理士や社労士のような安定した顧問報酬がなく、大半が単発のスポット業務です。しかも、不動産や金融とつながりが深い業界なので、景気の変動に左右されやすく、浮き沈みがきわめて激しいのです。売上げが前年比30%アップ、30%ダウンというのもよくある話です。
このような特性から、司法書士業界ではリストラをよく耳にします。例えば、住宅ローン借り換え時の登記申請も司法書士の主な業務ですが、これまで月30件受注があったのに、金利が上がった途端に1件も受注できなくなるということが起こり得ます。一時のマンションバブルの時期もそうでした。そうなると、所員10名の事務所が5~6名に減らすといったように、業務量の調整が必要になってきます。