国内大手メーカーに勤める丸山健太は、あるきっかけで中国製造工場の建て直しを命じられる。企業改革どころかリーダーとしての経験もない健太だが、周囲のサポートを得ながら難局と向き合い、やがて3つのミッションを通して一人前のリーダーへと成長していく――。海外における企業再生や買収・事業統合等の現場をリアルに描いたビジネス小説『プロフェッショナル・リーダー』が発売された。本連載では、同書の「ミッション1」の全文を9回に分けて掲載する(毎週火曜日と金曜日に更新)。

〈前回までのあらすじ〉総合電機メーカー・小城山(おぎやま)製作所に勤める丸山健太は、ある日、中国地方政府との合弁会社である小城山上海電機への出向を命じられる。総経理スティーブの右腕となって業績低迷に喘ぐ同社を建て直すのがミッションだ。健太は顧問の瀬戸と橋谷麻理の協力を得て、生産品質の改善、新製品開発の加速、調達コストの削減などの施策を続けるが、そこに資金繰りの危機、在庫の資材紛失といった深刻な問題が起こる。

生産設備ごとアウトソースせよ

 翌朝8時30分にスティーブは資金繰り改善の会議を招集した。出席者は総経理のスティーブ、副工場長のチョウ、CFOのリー、営業担当のミン、調達担当のウェイ、コントローラーの鈴木、それに健太と麻理だ。

「朝早くから集まってくれて、ありがとう。今日から当分の間、このメンバーで資金確保のミーティングを行うことにする。まずは鈴木さん、日次の資金繰り予想をシェアしてください」

 鈴木は、昨日報告した週次の資金繰り予想よりもさらに詳しい日次予測をスクリーンに映して、説明し始めた。

「これは向こう6週間の日次の資金繰り予測です。ご覧の通り、4週間後の火曜日に現金がマイナス残高になります。すなわち資金繰り倒産するということです」

「昨日の議論の通りだな。ありがとう。続いて売掛金の回収状況について。ミンさん、お願いします」

「大口顧客の5社については、今月中に支払ってもらうように、昨日のうちに交渉を始めています。5社の売掛金は合計3000万元(約5億1000万円)で、全体の約40パーセントです。そのうち、エレキザックスからは前向きな回答をもらっていますが、売掛金の3パーセントをディスカウントとして求められています」

 鈴木がコメントした。

「金利コストを年6パーセントと想定すると、売掛金の回収期間の短縮は2カ月として1パーセント程度が適当だと思います」

「ミンさん、それでは2パーセントまでのディスカウントを許可しますから、今月中の資金確保をお願いします。他社も同様でお願いします」

「わかりました。残りの顧客はどうしましょうか」

「好ましくない風評が流れるのは避けたいので、まずは大口5社に絞って交渉してください。それでは次に、サプライヤーへの支払い延期について。ウェイさん、お願いします」