国内大手メーカーに勤める丸山健太は、あるきっかけで中国製造工場の建て直しを命じられる。企業改革どころかリーダーとしての経験もない健太だが、周囲のサポートを得ながら難局と向き合い、やがて3つのミッションを通して一人前のリーダーへと成長していく――。海外における企業再生や買収・事業統合等の現場をリアルに描いたビジネス小説『プロフェッショナル・リーダー』が発売された。本連載では、同書の「ミッション1」の全文を9回に分けて掲載する(毎週火曜日と金曜日に更新)。

 
〈前回までのあらすじ〉総合電機メーカー・小城山(おぎやま)製作所に勤める丸山健太は、ある日、中国地方政府との合弁会社である小城山上海電機への出向を命じられる。総経理スティーブの右腕となって業績低迷に喘ぐ同社を建て直すのがミッションだ。健太は、顧問の瀬戸と橋谷麻理の協力を得てモデルラインの導入を成功させ、生産品質改善の手応えをつかむ。

開発の問題を特定せよ

 モデルラインと「3分間チェック」が軌道に乗ってきたその週の金曜日、健太と麻理は予定されていた瀬戸への現状報告のミーティングのために2階の大会議室に向かった。

 瀬戸は開口一番、健太にプロジェクトの進捗を尋ねた。

「モデルラインの稼働は順調に行っているかな」

「はい。チェックポイントを全部で7ヵ所設置し、それぞれの工程で問題が特定されるようになってきました。高い不良率は、社外のサプライヤーにも原因があることもわかってきました。問題の大きいサプライヤーには、2週間以内に品質改善を依頼する予定です。うまく行けば、今月下旬からは不良部品も減り、効果が出始めると思います」

「そうか。短期間でよくそこまでたどり着いたね。ご苦労さま」

 珍しく瀬戸は健太を褒めた。

「いえ、モデルラインの導入は麻理さんの発案ですから」

 健太は麻理のほうを向いて会釈をした。

「健太さんの『一つ一つ障害を取り除く地道な努力』という言葉がヒントになりました。健太さんの仮説をモデルラインで地道に一歩一歩検証しながらさらに仮説を修正し、本質的な問題にたどり着くことができました」

 麻理は健太に花を持たせた。

 瀬戸にしてみれば、健太の助っ人として麻理を連れてきて正解だったという思いだ。

「君らは良いチームワークを発揮してくれているようだね」

 健太は照れながらも、瀬戸に尋ねた。

「顧問は最初からサプライヤーに問題があるとわかっていたのですか。これが本質的な問題だったということですか」