電子ペーパーを使い柄を変えられるネクタイなど、様々な服飾品への展開を検討している
Photo by M.N.

 昨年9月からは、「SONY」ブランドを一切使わず、外部のクラウドファンディングの仕組みを使って、2回で計2000万円以上もの資金を調達しており、開発チームとしても大きな手応えを感じているという。

 FESウオッチの生産は、液晶テレビ「ブラビア」などを生産するソニーグループの稲沢工場(愛知県稲沢市)が担っており、量産化に入ったことで、出資者にはすでに製品を届け始めている。

 今後は、時計以外にも電子ペーパーを使ったイヤリングやネクタイ、メガネのフレームといった製品展開を考えているという。

新事業支援サイトの狙い

 そうした成功体験を基にして、ソニーが7月1日に立ち上げたのが、新規事業の支援サイト「ファーストフライト」だ。

 ヤフーと連携し決済機能を取り入れることで、サイトを通じたクラウドファンディングと、開発した製品のネット販売を可能にしたという。

 ソニーの源流でもある“開拓者精神”にあふれた人材を、側面支援するのがサイトの大きな狙いだが、そこにはソニーとしてやる気のある人材の流出に、歯止めをかけたいという思いも垣間見える。

 ソニーの近年の歴史は、テレビなど家電製品のグローバル競争で後塵を拝したことで、「赤字計上→新たな挑戦や成長に向けた資金の減少→ブランド力の低下」という悪循環から抜け出せず、人員削減・人材流出が続いてきたという経緯があるからだ。

 特に、ソニーを離れた人たちが続々と新会社を立ち上げ、コスト削減によって埋もれてしまった技術に再び息を吹きこうもと汗を流し、伸び伸びと仕事をしている姿に、「羨望の眼差しを送るようなソニー社内の雰囲気は、ここ数年でかなり強くなったと感じる」とOBの一人は話す。

 それだけに、現場から生まれる成長への新たな胎動に正面から対応できなければ、ソニーにとっての貴重な人材が、一段と外部に流出することは避けられなかったように見える。