日本の電子部品商社は、
業界再編でグローバル競争を勝ち抜ける
まず1つめの資本政策については先ほど述べた通りであり、PBR1倍割れで株式を発行するというような不合理なことは2度と行われるべきではありません。
配当性向(純利益のうち配当に回す割合)については、すでに会社側が19%前後から45~60%程度まで上げたため一定の理解は示していただけたのかなと思いますが、それでも不十分と考えます。現在黒田電気には手元資金が十分にあり、今後3年程度は100%の配当性向でも、計画通りの投資を含めた資金を十分に賄えます。
私たちの3つ目の主張は業界再編です。
世界の電子部品商社を売上規模で見ると、上位3社はアメリカ企業2社と台湾企業で売上高1兆円~3兆円と圧倒的な規模を持ち、メガディストリビューターと呼ばれています。4位は売上高3000億円強にガクンとおちて黒田電気、それ以下はずっと日本企業が並んでいます。
世界の電子部品業界では上位3社のメガディストリビューターと4位以下の日本企業とでは大きな差がついてしまいました。日本企業の存在感低下は著しく、このままではグローバルな競争に負けてしまう。ここは国内トップの黒田電気が業界再編のリーダーシップを取って、日本勢としてグローバルな競争に勝ち残れるようにするべきだと思うのです。
藤野 他の大株主の反応はどうですか?
村上 議決権の40%ほど占める外国人投資家の方々は資本政策や株主還元についてはもちろん、業界再編の話についてもおおむね賛同いただき、「いや、どこかがこういう行動を起こすのを待ってたんだよ」、「なぜ日本でこういうことが起きないのかと思っていた」という方が多かったです。実は上場している電子部品商社でPBRが1倍割れしてROEが低い会社の多くは外人持ち株比率がすごく高くなっています。おそらく彼らは業界再編に賭けているんだと思います。
藤野 創業家は賛同してくれているんですよね。
村上 株主であり創業家の黒田善孝さんからは私たちの案に賛同するレターを株主の皆さま宛てに書いていただきました。これは弊社のホームページに掲載しています。黒田さんは創業者のご子息であり、30年近く黒田電気の各部署を経験され、社長、副会長も歴任された方です。
そうした中で業界再編の必要性を痛感され、M&Aの相手先を選定するところまで行動されたのですが、全経営陣に反対され、最終的にご自身まで会社を追われた…というか、辞任することになってしまい本当に残念なことです。そうした経験から、私たちの考えに賛同していただき、文書もいただけたのだと思います。
電子部品業界の方といろいろ話していても、業界再編を考えてない人は一人もいないと。「皆で同じようなものを買い、皆で同じようなものを売り、国内では商圏があるとかいってすみ分けているけど、こんなんじゃ絶対グローバル競争の時代で勝てないよ」、と口々に言っています。
日本の電子部品商社各社は、海外展開の必要性は感じていてシンガポール支社とかインドネシア支社とかを持っていますが、各社とも同じように人件費をかけて、同じような業務をして、それでほとんど利益が出なくて苦しんでいるんですね。
藤野 業界再編はそうした海外展開を統一化することによるコスト面でのメリットも大きそうですね。
村上 その通りだと思います。日本では業界トップの黒田電気がリードして業界再編を進め世界のメガディストリビューター並の売上高1兆円規模を目指すことが、世界の電子部品業界における日本のプレゼンス向上につながると思いますし、グローバル競争で勝ち残るための足場固めになると思います。