株主目線を持ち、
働くことや会社の意味を問い直す
藤野 僕は明治大学で15年ほどベンチャーファイナンスの授業をしているのですが、2年前にベンチャーファイナンスのイメージを学生にアンケートしたんです。
そうしたら、ベンチャーのイメージについて8割が「ブラック」、ファイナンスのイメージについては6~7割が「ダーティ」という回答でした。だから、ベンチャーファイナンスは彼ら・彼女らにはブラック・ダーティって聞こえてるということです。それも商学部の学生ですよ!
しかし、最近さらに危機感を覚えているのは、「働くこと=悪」というイメージさえ広がってきていることです。働くことはストレスと時間とお金を交換することであり、生活のための必要悪であるという労働観がすごく広がっているということを学生と話していて感じます。
僕が今、書籍やネットなどいろいろなところで発信しているのは、働くということの意味や会社の意味、そして、それらと投資がどれだけつながっているのかということ。でも、そういうことを語る人が今ほとんどいないんです。働くことの価値や意味についてもう一度深く考えて、それを若者たちに伝えていかないといけないという危機感が私にはあります。
村上 私、5年前は大学生でしたけど、就職活動に際して多くの学生が、会社で働くということについて深く考えず、どれだけ楽していいお給料をもらえるかということを考えていたように思います。
働くことや会社について深く考える上でも、上場企業の場合にはストックオプション(会社の役員や従業員が、所属する会社からあらかじめ決められた価格で自社株式を購入できる権利。株価が上がれば利益が大きくなるので、賞与の意味合いで導入する企業が多い)、もしくは持株会の制度をもっと浸透させるべきだと思います。
自社株を保有をしていれば株主という立場で自分の会社を見れるようになりますし、それは仕事や会社などについて客観的に考える上でもすごく必要なことなんじゃないかと思います。
藤野 多くの人たちは、株価というのは投資家たちによるマネーゲーム的な行動で上下動しているだけと思っているのではと思います。だから、株式投資というのは不安定な感じもするし、リスペクトできない、という風になってしまっていると思います。
しかし、会社では従業員が頑張って価値あるモノやサービスを生み出して、それ必要とする人がそれに価値を感じて対価を支払ってくれことで利益が上がり、それが企業の価値を上げて株価も上がる。
自分が頑張ることで人に役立つ価値が生み出せるし、自分自身も様々な人たちとつながりながら成長できるという意味で働くということはとても楽しくて素晴らしいことです。そして、その場を提供してくれるのが会社だし、そこに事業資金を提供しているのが株主です。会社というのはそのように世の中に対して価値を生み出し続ける存在なんです。
もちろん、従業員を使い捨てるようにして利益を上げているブラック企業もありますし、そうした会社は非難されるべきです。また、そうした企業は持続的ではないでしょう。しかし、一般的な意味で労働はすばらしくて楽しく、会社はそうした場を提供するところです。そして価値を生み出した対価として上がるのが利益であり株価です。そうした労働観や会社観をぜひ若者の間に広げなければと思います。