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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

企業の中の陸軍と海軍、グローバル市場での敗退は陸軍偏重が原因か

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第29回】 2010年3月25日
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 彼らは英語を流暢に話す。両民族ともに元々複数の言語環境の中で育っている。彼らは相手によって言語を変えられる。英語もそういう言語のひとつに過ぎない。インド人は英語が母国語だ。それも英国の旧植民地時代からの英語なので、格調の高い英語を話す。中国人の英語は日本人よりマシだが、インド人には勝てない。

 中国人もインド人も国際経営が上手である。昔から華僑・印僑と呼ばれ、祖国を離れて外国で商売をしている人が世界中に数百万人規模で散らばっている。彼らには国境はない。元々複数民族・複数言語の環境で育った中国人・インド人は無意識に国境を越えているのだ。世界に広がる同胞たちを使ったグローバルな情報ネットワークは総合商社に匹敵する。

 韓国は日本と同様に単一民族・単一言語から成り立つ同質国家である。韓国企業は「努力」(英語教育・留学)によって言語・文化の国境を越えて今の成功を作り出している。韓国企業がこれだけ努力をしているのに対し、日本企業には意識的な努力が感じられない。それどころか自分たちの殻に閉じ篭ろうとしているように見える。少なくともシリコンバレーから日本に頻繁に出張している我々にはそう見えるのである。

日本市場でしか生息できない
ガラパゴス企業化する恐れ

 70年前を振り返ろう。陸軍は海軍が反対する中で、アメリカの実力を過小評価し、太平洋戦争に突入した。外地で負け戦が続いても、斬新な戦略を打ち出せずに立ち往生しているうちに、本土を焼かれてしまった。それでも降伏せずにズルズルと待っているうちに、広島と長崎に原爆を落されてしまった。敵の実力を測らずに、自分の価値観だけで進めた陸軍特有の戦争だった。今回も同じことが起きないか。

 陸軍化した日本企業が海外市場で敗退し始めている。今は韓国が相手だが、近い将来中国とインドが日本企業に競争を挑んでくる。現在の企業体制を維持する限り、日本企業は日本市場だけでしか生息できないガラパゴス企業になってしまうだろう。

 外貨を獲得できなくなった日本は、国民がいくら生活を切り詰めても追いつかなくなる。食料自給率は40%しかない。貿易立国としてしか生きて行けない国家である。

 日本の代表的な企業には何としてでも外貨を稼いでもらわなければならない。そのためには日本企業が自らの意思で自らを変革するしかない。これができるのか?「陸軍企業」から「海軍企業」に変身できるのか? 日本人の国民性に根ざした問題だけに、日本企業に突きつけられた課題は重く、且つ、深い。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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