生き残れるのは、「変化に対応」できる者だけ

森辺 「BOP(=Base of Pyramid)ビジネス」とはつまり、世界人口の最下層を占める約40億人をターゲットにしたビジネスのことですが、アフリカはその巨大なBOPマーケットの一角を占めていますね。名だたる先進グローバル企業がこのBOPマーケットに参入し、アフリカにも進出。世界シェアをどんどん拡大しています。

 一方、日本企業はどうでしょう。アフリカでのBOPビジネスはおろか、ASEANでの「MOP(=Middle of Pyramid)ビジネス」でも、まだ成果を出せている企業はほんの一握りです。僕は日本企業の海外進出を支援する仕事をしていますが、いまその多くはASEANの新興国が対象。アフリカに挑戦しようという企業はまだほとんど見られません。そんな状況のなか、なぜ先生は「いますぐアフリカに行け」とおっしゃるのでしょうか?

米倉 それは、日本企業を「再構築」するためです。否応なしに経済のグローバル化が進み、変化のスピードが恐ろしいほど速くなったいま、日本企業がそのスピードに付いていけていないと感じるからです。進化論を提唱したイギリスの自然科学者・ダーウィンの言葉のとおり、「唯一生き残ることができるのは、変化に対応できる者だ」と、いま改めて感じています。

 変化に対応できなかったひとつのケースをご紹介しましょう。それは、19世紀前半に世界的に有名になったアメリカの鉄道王、コーネリアス・ヴァンダービルト。かつてアメリカを代表する大富豪でしたが、いまでは彼のビジネスはもう跡形もなくなっています。その理由を、マーケティングの大家、セオドア・レビットが1960年に発表した論文『マーケティング近視眼』のなかで明らかにしています。

「ヴァンダービルトは、自社の事業を“鉄道事業”ではなく、“輸送事業”と考えるべきであった。そうしていれば顧客の要求の変化に気づき、自動車やトラック、航空機の台頭によってこれほどひどい打撃を受けることはなかったかもしれない。顧客のニーズを満たすことは、提供している製品そのものに集中するよりも継続的成功への近道なのだ」

 レビットのこの指摘のように、変化する顧客のニーズにいち早く気づき、ときには自分の本業を変えてでも「変化に対応」することは大切です。もちろん、これまで日本企業は世界が認める製品をたくさん生み出してきました。しかし、さきほどのヴァンダービルトの例のように、製品づくりに固執しすぎて変化に対応できず、継続的に成功するチャンスを逃しているケースが少なくありません。

 その点、変化に対応することで成功している企業の代表例と言えば、「ナイキ」です。ナイキが世に出てきたとき、僕たちはみんな、ナイキのことを靴屋だと思っていましたよね。ところが、いまではナイキのことを単なる靴屋だなんて思っている人は少ない。スポーツを通じて新しいライフスタイルを提供するという“ブランド”として捉えています。

森辺 たしかに昨今の日本企業は、海外である程度の成功を収めることはできても、ライフスタイルを提供したり、持っているだけで自慢したりできるような“ドリームプロダクト”というか、“特別なブランド”を確立することはできていません。かといって、コモディティ(一般化したため差別化が困難となった製品やサービス)になりきることもできない。中途半端な状況が続いていますね。これは全ての業界で言えることですが、ブランドでは欧米に負け、コモディティでは中国に負ける。非常にもどかしい状況が長く続いています。