インターネットの普及にともなって、「盗作」について厳しい目が注がれるようになりました。しかし、何を以って「盗作」と判断するのでしょうか。今回ご紹介する『音楽ビジネス著作権入門』を読めば、音楽の著作権の仕組みが手に取るようにわかります。
「パクリ」に厳しい現代
音楽業界の人は必見の書
著作権は非常に難しい。似たようなデザインはあちらこちらにあるし、どこかで聴いたような音楽もしかり。文章だってそうですね。
オリンピックのエンブレムをめぐる騒動がありましたが、本当にややこしい。エンブレムはだれが見てもそっくりだと言えるのでしょうが。でも、やはり具体的にどうやってコピーだと判断するのか、よくわかりません。
本書はデザインではなく、音楽の著作権に関する専門的な入門書です。本書を読んでようやく理解できた事実がたくさんありました。インターネットが普及し始めたのが1996年、20年近く経過しました。デジタル化と検索技術の発達によって、コピーも簡単になり、コピーの発見も簡単になっています。それ以前とは環境がまるで変わっています。音楽著作権を介してデジタル時代のクリエイティブを勉強するためにもよい本です。
評者は、たとえばポップスの場合、音楽の著作権は作曲家、作詞家、アーティスト(演奏者)が所有する権利だと考えていました。ちょっと違うようです。
音楽の分野では、作詞家・作曲家とアーティストそれぞれに与えられる権利が違います。しかもその権利は、契約によって音楽出版社やプロダクションに移っていきます。レコード会社は最初から権利者であったり、必要な権利を契約で譲り受けたりします。(2ページ)
音楽出版社、プロダクション、レコード会社にも権利があるというわけです。著者は大手レコード会社、ソニー・ミュージックエンタテインメントで長年、管理部門にいました。グループ社員向けに著作権講座を開いていたベテランです。広義の著作権はさまざまな権利から構成されています(本書186ページ以降で詳述)。