複雑怪奇な著作権の仕組みを
わかりやすく解説

 まず、ライブで演奏する実演家には録音権があります。録音してコピーされない権利でもあります。仮に作詞・作曲していれば、著作物の複製権があります。これもコピーされない権利でもあります。これはわかりやすい権利ですね。そして、レコード製作者にも複製権があります。

 そして、これらの権利を譲渡することができます。これが音楽ビジネスの根幹となります。

作詞家・作曲家は楽曲の著作権を音楽出版社に譲渡します。音楽出版社は、その管理を著作権管理事業者に譲渡します。主な委託業務は楽曲の利用許諾や使用料の徴収です。代表的な事業者がJASRAC(ジャスラック)です。(37ページ)

 レコード会社はCDの製造数量に応じて著作権管理事業者に楽曲使用料を支払います。手数料を引いて音楽出版社に支払い、音楽出版社がまたコミッションを引いて、契約している作詞家・作曲家にギャラを支払うことになります。音楽出版社は、楽譜を出版しているだけではなく、作詞家・作曲家のビジネスをサポートしているわけです。

 では、実演家であるアーティストの著作権(録音権)はどうなっているのでしょう。

アーティストは、実演家としての著作隣接権の全部をプロダクションに譲渡します。プロダクションは、音源に関わる演奏・歌唱の著作隣接権だけをレコード製作者に譲渡します。/レコード製作者は、アーティストの演奏・歌唱を収録した音源を製作し、音源に係るレコード製作者としての著作隣接権の全部をレコード会社に譲渡します。プロダクションから譲り受けたアーティストの著作隣接権も一緒に譲渡されます。(38ページ

「レコード製作者」と「レコード会社」が出てきますね。レコード製作者は音楽業界では原盤製作者と呼ばれています。レコード会社は原盤を複製して販売する会社です。なんとなく、原盤製作者はレコード会社だと考えてしまいますが、実際には多くの原盤製作者は音楽出版社です。

 もちろんレコード会社の傘下にも音楽出版社はありますが、プロダクションやテレビ局の資本下にある音楽出版社に力があるようです。番組とタイアップしてヒット曲を生み出せますからね。音楽出版社は著作権者から譲渡された作品をプロモーションして、売らなければなりません。

 テレビ局では、TBS系の日音、フジテレビ系のフジパシフィックミュージック、テレビ朝日ミュージック、日本テレビ音楽などが一般にも知られています。

 こうしてCDが製造され、販売されます。そして販売店の売上からレコード会社に支払われ、印税がレコード製作者へまわり、さらにプロダクションに支払われ、そこからアーティストへ支払われるというわけです。

 出版物よりも製作に関わる業種と人の多い音楽では、このように多段階でビジネスが行なわれています。本書には具体的に楽曲使用料の分配例が金額をあげて書かれています。