『フォーブス』誌発行人を務め、連続起業家でもあるリッチ・カールガードは「成功し続ける企業」の5つの条件を、ウォール街からシリコンバレーまで全米企業への徹底取材から明らかにした。本連載は『グレートカンパニー――優れた経営者が数字よりも大切にしている5つの条件』からそのエッセンスを紹介する。第10回のテーマは「相手に伝わるスピーチの6つの鉄則」だ。
なぜあなたのプレゼンは伝わらないのか
相手を惹きつける語り手になるにはどうすればいいのだろう。
幸い、私たちはみな、ストーリーを語る能力を、生まれながらに持っている。ただ単に、ストーリーテリングというのは一部の天才だけが持つ特殊な技術であるかのように思い込まされてしまっているだけだ。
ストーリーテリングのツールや方法にはさまざまなものがある。決まった正しい方法などないが、一方で、心に響くストーリーテリングとして、聴き手は「自分(聴き手)に関心を抱かせるもの」であることを求めている。その要求に応えよう。そうすれば、かなりうまく語ることができる。
(1)シンプルにする
多ければ多いほどよいと、たいていの人が思い違いをしている。視覚に訴えるものがあればあるほど、目立てば目立つほど、華やかであればあるほどよい、と。実際には、シンプルであることが、どんなものを生み出すプロセスにとってもカギになる。
小説家であれ画家であれデザイナーであれ、みなオッカムの剃刀で不要なものを削ぎ落としながらイノベーションを図る。そしてシンプルであればあるほど解決策はよりよいものになる。
(2)聴き手についてよく知る
優れたストーリーの語り手はみな、聴き手がどういう人かをしっかり判断することができる。
「分析好きな人たちに向かって話すなら」とナンシー・デュアルテは言った。「感情に訴えるのを控えて信頼を保つ必要がある。逆に、感動しやすい人たちに向かって話す場合は、分析的な話し方にならないようにする必要がある」。読者のみなさんにしても、ロッカールームでするような話を、よもや会議室ではしないだろう。
(3)ネガティブな要素を強調しない
ストーリーを語るときは、未来を推測するのは避けよう。むろん、大変なことは起きるかもしれない。今より状況が悪くなる場合もあるだろう。それは間違いないかもしれないが、メッセージは穏やかに伝えよう。不誠実になれとか率直な対話をすべきでないなどと言っているのではない。
誠実であるべきだし、また率直であるべきだ。ただ、欺瞞だとか人の心を操ろうとしているとしてさっさと退けられてしまうような、過激な予想はしないこと。