12年間で700万円を費やした不妊治療
もう後には引き返せなかった──

 大阪府内に住むカナミさん(48歳・仮名)は、昨年、7歳年上の地方公務員男性との16年に及ぶ結婚生活にピリオドを打った。離婚原因のすべては妊活に集約される。

 35歳から47歳まで12年間、不妊治療を行なってきた。だが子宝に恵まれず、人生をリスタートするに至った。「結婚生活当初から“妊活”が原因で夫婦での諍いが絶えませんでした。結局、不妊治療を続けた12年間という時間と、700万円近くのお金、そして夫を失っただけでした」(カナミさん・以下同)。

 そもそも夫婦仲に亀裂が入ったのは、最初に受けた、医師からの指導で妊娠確率の高い排卵日での性交を行う「タイミング法」*5での治療に始まる。夫は、この指導される性交をプレッシャーに感じ、その日に限って深酒をして遅くに帰宅したり、サウナやカプセルホテルで外泊したりするようになった。カナミさんがそれをなじると、夫は「俺はお前の子作りのための道具じゃない」と罵る。そんな生活が約3年続いた。

「保険適用が利くタイミング法の段階では夫婦仲はまだ修復可能でした。でも体外受精、顕微受精と治療が進むと、もう保険適用は利きません。経済的負担の問題も出てきて、夫婦仲は冷え込む一方でした」

 気がつけば40代も目の前、子どもを持ちたいという気が焦るばかりだった。体外受精は1回につき約5万円から100万円の費用がかかる。一般的には1回につき30万円程度が相場だという。より高度な治療へと進めば進むほど費用は高額だ。不妊治療に1000万円かけたが子宝に恵まれなかったという話もよく耳にする。

「夫と実家の両親を交えて話し合いの末、不妊治療にかかる一切の費用は私と実家で賄うということで、どうにか夫婦の縁を保つことができました。でも、今思えばそれも夫にとってはプレッシャーだったのかもしれません」

 カナミさんの貯金300万円、実家からの援助で500万円、合計800万円を用意した。実家の親からは、「遺産の前渡しだ。必ず元気な赤ちゃんを産めよ」と言われた。それはそれでカナミさんにとって辛いものがあった。だが、もう後には引き返せない。

*5:医師側で妊娠確率の高い排卵日を予測、その日に性交を行い、妊娠を待つというもの。不妊治療の一つだが、「妊娠指導」という側面が強い。不妊治療を始めたばかりの20代、30代前半の人に向く方法といわれている。