VWを追い込む不正問題と
見逃せない創業家の影響
排ガス不正問題でブランドイメージが大きく低下したフォルクスワーゲン(VW)は、今後、消費者に対する損害賠償金や米国での制裁金、さらにはリコール費用の負担によって、いっそうの苦境に追い込まれる懸念が高まっている。
業界専門家の中では、傘下企業であるアウディの売却や株式発行による追加の資金調達の必要性が指摘され、最悪のケースでは公的資金注入を含む国有化の可能性を指摘する声さえある。
トヨタと世界トップの座を争ってきたVWが、何故、常識では考えられない不正行為に手を染めたのだろうか。答えは一つではないだろう。世界一を志向するドイツ人特有の意識や、裾野の広い自動車産業を強化したい地元の要請などがあったはずだ。
その要素の中で一つ見逃せないのは、VWの発足当時から連綿と続く創業家の影響だ。元々、同社はナチス政権の「国民車計画」によって創設された。そのため、フォルクスワーゲン=国民車という名前が企業の名称になった。
実際の業務活動については、ポルシェ創業者であるフェルディナンド・ポルシェが生みの親とされている。第二次世界大戦後、VWは名車ビートルの大ヒットで事業を拡大することになる。
その過程で、創業家であるフェルディナンド・ポルシェの長女は、名門ピエヒ家に嫁いだ。その結果、ポルシェ家・ピエヒ家が大きく関与し、均等にVWの経営を担うことになった。
現在でも両家は議決権の過半を維持しており、同社に対する圧倒的な発言権を持っている。大企業の中にも、創業家一族が経営に対する影響を維持するケースは珍しくはない。しかし、VWのケースでは、経営権を握る両家の対立などが、不正問題の元凶になった可能性は高い。