でも、もちろん世界にはいろんな人がいまして、これは藤原正彦さんが『国家の品格』で言及されていましたけど、インド人のラマヌジャンさんという数学者がいるらしいんです。この方は高卒なんですよね。でも、ものすごい理論をたくさん考えた。これはちょっと異常なケース。
普通は違いますよね。たとえば、もしピタゴラスの定理を学校で習わなかったとしたら、僕たちはこれを考え出すことができたでしょうかね?
(会場)無理じゃないかな〜。
そうですよね。おそらく一生かかったって、この会場にいる誰一人として考えることはできなかったはず。ですから、そういうものについては「学んで」しまったほうが圧倒的に得なんですよ。
『東大卒』のこの本って、当然、「考える」ことの大切さを伝える本なんですけど、じつをいうと、僕はなんでもかんでも考えろというつもりはないんです。そもそも「考える」っていうのは大変しんどい。僕もなるべく考えることを人に任せてしまいたくなります。それはやっぱり「考える」っていうのがどれだけ大変かっていうことをよくわかってるからなんですが。
学力だけではどうにもならない世界
一方、こんな数学の世界とは真逆の世界もあります。たとえば、お笑い業界。笑いの世界には「これさえ学んでおけば必ず笑いがとれて売れる」という普遍的な理論って、おそらくないですよね。
僕の親友の一人でもある吉田正樹くんというのは、もともとはフジテレビで大ヒット番組をたくさん手がけたプロデューサーで、いまはワタナベエンターテインメントの会長をやっているんですけど、彼のところでも「ワタナベエンターテインメント カレッジ」というのをやっているらしいです。吉本興業にも「NSC」というスクールがありますよね。
じゃあ、そういう学校で一体何をやるのかっていうと、多少は「お笑い理論」らしきこともやるらしいんですけど、基本的にはやっぱりネタを実際につくってみて発表する。言うまでもないことですけど、これはお笑いの世界というのが9割9分「考える」の世界だからです。学ぶべきことなんて、実はあんまりなくて、考えに考えた芸人が頂点に立つのがお笑いだと。
そうしたときに、みなさんに聞いてみたいのは、「みなさんのお仕事って、数学の世界とお笑いの世界、どっちに近いですか?」ということなんです。どうでしょう、どう思いますか?
(会場)お笑いの世界、ですかね。
そうですよね? 結論から言いますと、経営サイドにフェーズが上がっていくほど、おそらくお笑いの世界に近づいていくと思います。つまり、普遍的な理論がなくて、何かを学んで対応できることが少なくなっていく。
一方、現場の技術者さんとかであれば、けっこう学ぶべきことがあるかもしれない。新入社員とかもそうですよね。学ぶべきことがたくさんある。あと、営業職のコアな部分っていうのは、勉強しただけでは磨くことができなくて、どちらかというと、普段からものを考えている人材がポーンとトップ成績を出すなんていうことが起きてくる。