書斎がお父さん(やお母さん)の人生を変える?

 書斎は大切です。私は親子5人、3LDK(70平方メートル)に住んでいたときも、書斎を確保していました。一番陽当たりの良い南側の角部屋は、いつもお父さんの部屋、書斎でした。

大きさは関係ありません。場所も本当はどうでもいいのです。廊下の隅でも居間の上のロフトでも、「お父さんの書斎」が、確保されていることが大切なのです。直接目に入らずとも、そこにいて「お仕事」をしていることが、子どもたちに伝わればいいのです。

 私は八百屋の家に育ったので、親の偉大さが自然に理解できました。朝5時に起きて朝市に行き、数十万円分の仕入れを即断即決でこなしていきます。それに失敗したら大量の生鮮品が売れ残ります。途中で危なそうなら、すぐ刺身にしたり揚げ物にしたりして惣菜として売る準備を始めなくてはいけません。それでもダメなら、最後は家族で消費するしかなくなります。毎日、これをくり返します。雨が降ろうが槍が降ろうが。

 判断も作業も、自分(子ども)にはとてもとても出来ません。でもサラリーマンの子どもたちには、親のやっていることが見えません。見えてもホワイトカラーの仕事なんて、子どもたちには訳がわかりません。書類をつくることの価値、コミュニケーションを取る意味がわかるのはずっとずっとあとでしょう。

 だけど、親がダイジなことをしていることを伝えるために、家での書斎が役に立ちます。親の「お仕事」は子どもの「勉強」や「宿題」よりも、ずっとダイジなのです。だから、子どもの勉強部屋より親の書斎を優先したいのです。

家族で本棚を共有の図書館にする

 数年前、弟が住んでいるマンションをリフォームするというので、少し手伝いました。 予算の都合で完全なリノベーションではありませんでしたが、いくつか面白いことができました。

 もともとマンションにはよくある間取りですが、その家でも「廊下の先にベッドルームが3つぶら下がる」形でした。そうするとそこにはドア(開き戸)3枚によるデッドスペースがいっぱい生まれます。引き戸に変えればそれらを解放できるかもしれません。

 そんな「プレルーム(部屋の手前の部屋)」をつくろうというアイデアを建築士さんたちがくれました。結局、デッドスペースを寄せ集めて丸2畳分のプレルームをつくることに成功しました。そしてそれを家族共用の「図書室」にしたのです。

〔出所:『戦略読書』三谷宏治〕

 薄い本棚を目一杯造り込んだので、1000冊も詰め込めます。みんなの本が置ける場所です。お父さんの本もあれば、お兄ちゃんの本も、妹の本も、お母さんの本も(*4)ある「わが家の図書室」です。みんなが通る場所だから、お互いが何を読んでいるかわかります。子どもが親の本を読むこともあるでしょう。

 私自身の家だと、居間も食堂も廊下も、かなりの部分が本棚化されており、しかも子ども部屋のもの以外は基本的に私(お父さん)の本が並んでいます。たとえば、1階居間の造り付けの本棚(幅3m)はすべてマンガで埋まっているのですが、もちろん私のものだけ。2階の書斎のとなり、トイレ前のスペースには3本の本棚がありますが、これは私の書斎から溢れ出した本。「ファンタジー」「日本作家のSF」「小説」が並べられています。

 あ、でも良く見たら『王さま』シリーズ20冊がなぜかその一角に(笑)。三女がこっそり置いていたようです。