本の収納・管理は、本好きを悩ませる永遠の課題。また、天井まで本が並べられた書斎に憧れる人も少なくないだろう。無類の本好きとして知られる三谷宏治氏は、どのように理想の書斎をつくり上げたのか? 『戦略読書』から一部を抜粋して紹介する連載の最終回は、長年試行錯誤して辿り着いた、三谷流書斎術。本棚のサイズからデスク周りの環境、家族との共有法、分類・並べ方まで、写真とともにそのノウハウを大公開!(写真:京嶋良太)

仕事場は自宅の書斎。完ぺきな環境をデスクにととのえる

 私が普段、活動しているのは自宅の書斎です。会社勤め(BCGやアクセンチュア)だったときも、6時過ぎには退社して、7時以降は家だった(*1)ので、自宅の執務環境は大変重要でした。

 オフィスでも自室がありましたが、会議やなんだかんだで机に向かってやることはせいぜい、メール(1日100通以上)の返信くらい。新しい企画のために知恵を絞ったり、時間をとって資料をつくったり、文章を書いたりするのは、昔から自宅の机の上でした。 だから、自分の書斎が作業上、一番快適につくってあります。であれば、そこでやるのが当然です。

 まず、机がとても大きいのです。普通の机ではなく、通販で安い6人掛けのキッチンテーブルセット(3万円也)を買ってイスを手放し、残ったテーブルを書斎机にしていました。

 幅160cm、奥行き80cmもあるので、それだけで便利です。両脇にはガンガン、資料用の本が積んであり、正面には22インチの液晶ディスプレイが2つ並んでいます。そうすると、デスクトップの総面積は2600㎠強で、17インチディスプレイ1台の3倍に相当します。画面の解像度にもよりますが、同時に4つほどのアプリケーションの「窓」を置いておけ、いちいち「片付ける作業」がなくなります。

机の下のパソコンは、常にハイスペックマシーンでこれも作業上のストレスがありません。さらには、完ぺきなオーディオ環境(*2)がととのえてあり、気合いを入れるも落ち着くも自由自在です(笑)

 東か南側のカド部屋で、正面と左右に窓。そして左右の壁は窓の他は全面上から下まで全部本棚です。ほぼ隙間なく。

すべての壁を浅い本棚にして本の見える化を

 自分が買ってきた本で主要なものや、自分が面白いと思ったものは、なるべく「開架」したいと思っています。なので書斎だけでなく家中本棚です。

 長年の試行錯誤の末に、本棚は「奥行きの浅いものを天井まで」と決めました。造り付けの本棚も、通販で買った組み立て式本棚も、奥行きは17cmで統一です。

 文庫(奥行き10cm強)やマンガももちろんですが、ビジネス書でよくある四六判(同13cm)やA5版(同15cm弱)も、これで十分収まります。B5版(同18cm強)の大型本だって、少しはみ出すだけなのです。

 普通の棚は奥行き30cmだったりしますが、これだと手前がムダになるか、本を前後に並べると後ろの本が見えなくなります。蔵書庫としてはいいのかもしれませんが、それでは開架になりません。

 伸縮式のもので天井まで隙間なく本棚にすれば、幅75cmに文庫で600冊、四六判でも350冊が詰め込めます。天井までしっかり突っ張れば、地震のときでも、本棚が倒れたり本が落ちたりすることはほとんどありません。

 本棚に囲まれながら、これまでに読んだ数千冊の本を眺め渡します。「ああ、こんなネタもあるな」「あれとつながっているのかも」と感じて、本を手に取り、そして気になる点はパソコンですぐに調べる。そんな環境が私の発想や執筆のベースなのです。

電子書籍も見える化したい。タブレット自体を開架する!?

 書籍が全部、電子デバイスの中に入っていれば、確かに場所をとらなくていいのですが、見えないので「自分への刺激」になりません。もちろん、それもあと5年もすれば、壁一面がディスプレイになって、バーッと、「あなたが持っている本一覧」みたいな感じで、全面に映し出せるようにもなるでしょう。そうしたら変わると思いますが、それまでは「紙の本を開架」作戦です。

 といいながら、便利さに負けて(*3)すでに十数冊かは電子書籍(本や雑誌やマンガ)を買ってしまっています。そのままでは開架にならず、自分がどんな本を読んだのか、まったく目に付きません。これを少しでも紙の本の開架に近づけるために、家では(その電子書籍が読める)タブレットそのものを「開架」しています。みんなが一番集まるキッチンの壁に、タブレットを架けているのです。

 必要なのは石膏ボードに取り付けられる壁掛けフックが3つだけ。1000円もかからず、ほんの数分で作業完了です。これで少しは、この電子書籍たちがみんなの目に留まるようになるでしょうか。