理想的なリーダーは
「2つのスタイル」を併せ持つ
そして、それを実現するための最適解が、「働く目的」をメンバー全員に明確に伝えていくビジョン型リーダーシップです。これからのリーダーの仕事は、ビジョンをつくることであり、それをメンバーに浸透させることなのです。
ですから、その先の具体的なアクションは、メンバー個人に委ねることになります。現場に命令を出したり、メンバーの動きを細かく管理したりするといった「管理職的な口出し」は、もはや不要になりつつあります。
しかし、経営者ならまだしも、現場のリーダーをしていると、現場が見えるがゆえに、細かな指示を出したくなるものです。メンバーと同じ目線で動きすぎて、忙しくなってしまっているリーダーも散見されます。
「命令や指示をしないなんて、現場のプレイングマネジャーには無理ですよ!」という反論も聞こえてきそうですが、そこは程度の問題です。まったく指示をしないという選択肢はないかもしれませんが、日ごろの指示を、一度冷静に見つめ直してみると、言わなくてもよかったことや、メンバーの自主性を阻害しているものが見えてくるはずです。
リーダー(Leader)とは、「リード(Lead)する人」ですから、私たちはどうしても「みんなを力強く引っぱっていく役割」をイメージしがちです。
しかし、そうではないリードの仕方もあるのです。かつてのように、昇級・昇進やその他の信賞必罰によってメンバーの行動を制限していくのではなく、メンバーがワクワクして自ら動き出すような目的を提示し、現場に任せるのが新しいリーダーシップのかたちです。
もちろん、組織やチームが危機に直面し、メンバーが右往左往している局面では、全権を担って矢面に立ち、時には剛腕をふるって組織を守り、時には敵をつくりながらも力強くチームを牽引していく、そんなリーダーが求められます。
たとえば大災害のときには、強烈なリーダーがいて初めて多くの人の命が救われるということを、多くの日本人が実感したと思います。
つまり、今回の本『最高のリーダーは何もしない』はカリスマ型リーダーを全否定し、ビジョン型リーダーだけを肯定したいわけではありません。
「強いリーダーシップを発揮できる素地を持ちながらも、平時にはビジョン型に徹する」というように、状況に応じて両方のリーダーシップを使い分けられる人こそが、理想的なリーダーです。