「同じ釜の飯」でビジョンを浸透
さて、共感できる仲間が集まり、組織の規模が大きくなってくると、リーダーの言葉がメンバー全員に届きづらくなってきます。
そうなると次に必要なのは、リーダーと同じ思いでメンバーに語りかけてくれる「幹部」を育成することです。
いろいろな方法があると思いますが、私が取材してきたなかで、最も効果がありそうなのは、「寝食を共にすること」です。実際、社長と幹部が合宿をしている会社は増えているように思います。
私も、いくつかの会社の役員合宿などにご一緒させていただいたことがあります。
「どうやって我が社の利益を拡大するか?」というような実利的な話を日中にしていたかと思えば、夜になりお酒も入ると、またひと味違ってくるのが合宿の魅力です。
みんなが座敷で車座になったり、ソファに集まったりして、スーツを着ているときよりも熱い対話がはじまります。未来志向で夢や議論をぶつけ合ったり、現場の苦労話を共有し合ったりと、心を基点とした独特なコミュニケーションが生まれてくるのです。
合宿の機会は、リーダーのビジョンをチームで共有するうえで、とても効果的です。海外の企業などは、こうした取り組みを「オフサイトミーティング」と称し、世界各地のリゾート地などリラックスできる場所で終日語り合ったり、グループワークをしたりするのがあたり前になっています。
日本企業も世界展開をするなかで、オフサイトミーティングのような活動が増えていくと思われます。すでにITビジネスの最先端を走るベンチャー企業などは、こうした取り組みを頻繁に実践して、チームワークを高めると同時に、新たなビジネスをスピーディに生み出しています。
また、世代的な特徴として、とくにバブル期入社の人たちは、会社の人たちとオフサイトで関わるのを好まない傾向があるように思いますが、新しい世代の起業家たちは、再びこうした取り組みを積極的に取り入れています。
バブル世代を除いた上下の世代が、オフサイトミーティングで信頼を深め合う流れが、いまに起きてくるかもしれません。