実践
最初にちょっとしたショックを味わってもらったら、すぐさま手を動かしてもらいます。業務課題を表現したり、施策のアイディアを出したり、ITの機能を一つひとつリストアップしたり……。
変革プロジェクトでは、普段の現場仕事よりも抽象的なことを考える能力(コンセプチャルスキル)が必要になります。
現場で活躍されている方でも、この段階で途端に手が動かなくなる人が多い。多分、普段とは脳ミソの使い方が違うのでしょう。
仕事し慣れた自分の部署とは違い、プロジェクトは別の会社、別の部署からいろいろな人が集まっている、心細い「虎の穴」です。ここで磨かれるタフさも、よいPLの条件のひとつです。
座学で種明かし
ここまでやって、ようやくトレーニングを受けてもらいます。
お手本を見て、自分で苦労した後ですから「学びたい、もっとうまくやれるようになりたい」という渇望は最大限になっています。
座学って、こういう状態でやらないとあまり意味がないですよね。
座学で目指すのはまず、何をやればいいのかがわかるようになることです。
何を決めればいいのか、どんな資料を作ればいいのか、誰を巻き込めばいいのか。
そして、もうひとつの重要なスキルはファシリテーション。
リーダーシップを発揮するための武器です。
座学を終えて「何気なくやっている裏には、体系化されたノウハウがあったんですね!」となれば、しめたものです。
この段階になると、わたしたちとやっているプロジェクト以外の仕事でも、学んだことを実践し始める人が多く出てきます。
自分で勉強会を開いて、部署の後輩にも伝えたり。
先日びっくりしたのは「座学でノウハウを習った後、3時間で資料を直し、翌日の役員報告に間に合わせました!」という話です。
経営幹部から「こいつはPLに育てよう」と選抜されるくらいですから、優秀な方がほとんどです。やり方さえ本気で学べば、成長は驚くほど速く、わたしたちコンサルタントがタジタジになるケースも出てきます。
さらなる実践と振り返り
座学で学んだ理論をベースにさらに実践すると、より理解も深まります。
この段階で重要なことは、他人から「あなた、こんな感じですよ」とフィードバックしてあげること。
もちろん、できていることがあれば、それを定着させられます。できていないことは、理論を復習し、また現場で修行するしかありません。
このようにして、お手本⇒実践⇒座学⇒振り返りのサイクルを短い単位でグルグル回します。
このサイクルが有効なのは、ITプロジェクトを率いるPLの育成に限ったことではありません。
ただしPLの場合は、特に育成方法が確立しておらず、教えられる人もほとんどいない。
外部の力も借りて、かなり意図的にこのサイクルを回す必要があるでしょう。