成功率が低いなら、低いなりの作戦がある!
わたしがサッカーを見始めたのは、Jリーグが開幕し、ドーハの悲劇があったころですから、かれこれ20年以上前になります。
そのころから素人ながら不思議だったことのひとつに、PKを阻止しようとするゴールキーパーが、闇雲に(時には蹴ったボールと反対方向に)横っ飛びすることでした。
もちろん、その理由はしばらくすると理解できました。キーパーにとってPKは極めて阻止しにくく、左か右かでギャンブルをする価値があったのです。
ちなみに、JリーグにおけるPKの阻止成功率はたったの23%です。左か右かのギャンブルは成功率50%ですから、確かにヤマを張る方が合理的です。
そう、成功率が低い仕事に立ち向かい、それでもちょっとでも成功率を高めようと思うならば、普段とは違う仕事の仕方が必要なのです。
さて、この連載のテーマである、ITの世界に話を戻しましょう。
ITを作る仕事はプロジェクト形式で行なわれます。しかし、ITプロジェクトがすんなりと進まないことに、どの会社も悩んでいます。
誰もやったことがない、初めてのチャレンジに、混成部隊で挑む仕事ですから、ITプロジェクトはそもそも宿命的に難しい。
しかし、ここでわたしが強調したいのは、
「本来難しいITプロジェクトに、あたかも簡単に成功する仕事のように取り組んでいませんか?」ということです。
例えば、ITプロジェクトの世界には、「当初の計画に比べて、お金が2倍かかってしまった」とか「完了が1年遅れた」とか「どうにもならないので、プロジェクトを中止し、これまで作ったものはすべて捨てた」といった、直視したくない失敗プロジェクトが数多くあります。
単なる「ちょっとした失敗」ではなく、「会社を揺るがすような大失敗」。
ここまでひどい状況になるには、
「このままがんばれば、いつかは完成するだろう」
「ここまでお金をつかったんだから、もう戻れない」
など、楽観からくる、大きな判断ミスが重なっています。
でも、実際にはITプロジェクトは成功率が低い、難しい仕事。そのような楽観的な判断では、傷をますます深くしてしまうだけです。