なぜ、ITに業務担当者が関わるのか?
ITを育てることをIT部門に丸投げするのではなく、業務担当者にもちゃんと参加してね、という話を拙著『会社のITはエンジニアに任せるな!』のなかで何度も書きました。
業務担当者に参加して欲しい、いちばん大事な場面は要件定義。
つまりITを使い、ITによって利益を出す人たちこそ、「どんなITが欲しいか?」を語る必要があります。
これは、ITの細々したところまで設計しろ、と言っているわけではありません。
要件と設計は違います。
家を建てる時を例として考えましょう。
【要件】使う人が考える、要望
・4人家族で住む
・台所は明るい方がいい
・トイレは2つ欲しい
【設計】専門家が考える、要件を満たすための実装方法
・台所は2階にする
・ひとつ目のトイレは階段の下にする
・工法は……
・壁紙は……
わたしは、建築家さんに頼んで家を建てたことがあります。
最初は「こういう間取りで……」などと、素人ながらラフスケッチを書いたりしてみたのですが、あまりに発想が貧困なのでやめました。
その代わり……
・どんな家が欲しいのか
・自分たちはどんな人間で、どういう生活がしたいのか
を伝えることに注力することにしました。
自分たちの価値観を一つひとつ言葉にして、まるでITプロジェクトのように「要件定義書」を作ったのです。
そして、そこから後の設計はすべて、信頼している建築家さんにお任せしました。
わたしたち家族の要件を最もうまく実現する設計をプロが考えてくれたのです。施主が素人設計をしたら、伝えていた要件がブレるだけでしょう。
ITプロジェクトでもまったく同じです。
「どういうテクノロジーを使って、どう実装をするか?」については、その道のプロであるITエンジニアに任せてもいいのです。
その代わり、業務担当者は徹底的に
・どんなITが欲しいのか
・自分たちはどんな組織で、どういうビジネスがしたいのか
を語る必要があります。