銀行の多くは、人員の多い50代前半に充てるポストが不足している。そのため、定年を事実上早める形で、自らの関連会社や一般企業に転籍させているのだ。

 もちろん、これまでもそうした出向制度はあった。しかし、対象となる年齢が年々下がってきているのだ。

 転籍後も安穏とした第二の会社人生は送れない。社員からは「銀行さんに何が分かる」と疎まれ、先に転籍している先輩からもいじめ抜かれたりするという。

 というのも、こんな時代、新たな就職先を探すのは容易ではない。自分のポストが脅かされてはまずいと保身に走り、「あいつは使えない」などと喧伝するというのだ。

「銀行時代には仲が良かったのに。精神的に参る」と、転籍したメガバンクOBは困惑するばかりだ。

 退職金や企業年金といった面でも、50代は苦しい状況に追い込まれている。

 2009年以降、金融危機のあおりを受けて、多くの中小企業で運用難による退職金の積み立て不足が顕在化した。

 都内のある中小企業も、深刻な積み立て不足を受けて、国の助成がある「中小企業退職金共済事業」に制度を移行した。

 50代の社員はある日、人事担当者から個室に呼ばれた。移行後の退職金の試算について説明を受けるためだ。

 目の前に差し出された試算表を見て、目を疑った。すでに退職した人たちと比べて、退職金の額が実に2000万円近くも減額になっていたからだ。

「退職後の人生設計が大きく狂った。タイミングが数年違っただけで天国と地獄だ」と、この社員は愚痴る。

 今の50代、特にその前半組は、団塊世代などが同じ年齢のときと比べ雲泥の差だ。役員とまではいかなくても、それなりの立場で部下を従えて会社を動かし、会社人生を終えた後に思いをはせるなど、夢のまた夢となっている。