仕事の権限も年収もダウン──
50代の使い方が「もったいない!」

50代以上のビジネスパーソンが存分に活躍できていない現状は「もったいない」

 政府は「一億総活躍」をキャッチフレーズとして掲げている。

 国民を「一億」と一からげにする言い方は気味が悪いし、「活躍しろ」というニュアンスにも「余計なお世話だ」と言いたくなるところであるが、目指すところは悪くなさそうなので、ここは、押しつけがましさを我慢するのが正解だろう。女性も、高齢者も、介護が必要な家族がいる人も、能力を発揮して、やりがいのある仕事(稼ぎになる仕事ばかりとは限らない)に注力できる環境ができるとすれば、それは素晴らしいことだ。

 さて、私事で恐縮だが、筆者は今年58歳になる(誕生日は5月です)。もちろん、日本の同年代を隅々まで見ているわけではないが、同年代のビジネスパーソンが、前記の意味で存分に「活躍」しているか、というと「もったいない」と思うことがしばしばある。

 かつて大企業に入った大昔の「就活」の相対的成功者であっても、筆者のよく知っている業界で言うと、大手商社では55歳が「役職定年」で、役員ないしそれに準ずる幹部社員以外は仕事上の権限や年収がシフトダウンしている場合が多い。さらに、銀行の多くは、50歳前後で銀行本体の立場を離れて「出向」となり、第一線を外れて、かつて流行ったドラマ「半沢直樹」風に言うと、「お前はもう銀行員ではない」という宣告を受けている。

 大企業のような組織には競争が必要だし、例えば50代の社員全員を執行役員以上の待遇にするような経営がいいとはとても思えない。「上がつっかえていると、組織が沈滞する」とか「キープ・ヤング!」(某証券会社が好きなフレーズだ)といった意見には、一理も二理もある。

 実際、現実をよく見ると、競争の厳しい組織では、最終的な一歩二歩の違いが出るのは40代、50代だとしても、人物に対する評価は30代後半には大方定まっている。多くの場合、周囲だけでなく、本人もそれを知っているはずだ。

 しかし、能力があってモチベーションの高い中高年社員の仕事や報酬を、年齢だけで不連続に引き下げるのは、「人材」の使い方として、一つには(1)「会社として、もったいない」し、あるいは、会社としてそれが最適であるとしても、(2)「社会としては、もったいない」感じがする。

 彼らに、存分に「活躍」してもらうためには、どうしたらいいのだろうか。