米シリコンバレーで、最新型のBMW7シリーズに乗った。ステアリングホイールの右にあるスイッチを押して、英語でこう言った。
「会議で遅れるからスターバックスで待っていてと、ブライアンさんにメールして」
すると、クルマが「ブライアン・シュミットさんで良いですか?」と聞き返してきた。「ハイ」と答えると、「メールを送っても良いですか」と返してきたので、「ハイ」と言うと、「メールを送りました」と返してきた。
次に、「フリーウエイ101の南行き」と言ってみた。すると、フリーウエイの入口の候補が3つ表示され、「こちらが答えで…」というクルマからの回答が終わらないうちに、こちらから“バージイン(割り込み)”して、候補に振られた番号の「2」と言ってみた。すると、クルマは途中でしゃべるのを止めて、候補2番のフリーウエイの入口へカーナビがセットされた。
さらに「ストーンズが聞きたい」と言ってみると、車載データに組み込まれた「ザ・ローリング・ストーンズ」のアルバムが選曲された。
この他、「タイヤの空気圧は?」「エンジンオイルのレベルは?」などと聞くと、車内画面に詳しい情報が表示された。
スマホでは普及中の音声認識
日本の車内ではなぜ使われない?
BMWに限らず、最近は日本メーカー車の多くでもドライバーの発話を認識して回答する、「音声認識」機能を搭載している。日系メーカーの技術者は「オンニン」と略すことも多い。
だが、この「音声認識」を日本で頻繁に使っている人は少ない。なぜなら、こちらの発話に対して「もう一度言ってください」とか、「その機能は使えません」など、クルマが一方的に拒否することが多いからだ。または、ステアリングについている音声認識機能ボタンを、コールセンターに直結する「オペレーター呼び出しボタン」だと勘違いしている人も多く、音声認識の利用が進んでいない事情もある。さらに、ディーラーマンも顧客に対して音声認識について詳しく説明することはほとんどない。
一方で、スマートフォンでは、一般的に「音声アシスタント」と呼ばれ、音声認識の精度がどんどん良くなっていることを多くの人が実感している。例えば、横浜市内で「明日、雨降る?」と聞くと、GPSで現在位置を把握して「雨は降りません。明日の横浜の天気は、晴れ時々曇りでしょう」と返答し、最高気温・最低気温・降水確率などを含んだピンポイントの天気情報を表示する。「音声認識」のブランドとしても、iPhone向けではアップルの「Siri(シリ)」、アンドロイドではグーグルの「OK Google」という機能名称は、テレビCMでもお馴染みだ。