日本企業はすでに
世界的な「人材採用・育成競争」に巻き込まれている
「日本は日本、アメリカはアメリカ」と言っていられないもう1つの理由は、日本企業がすでに、アメリカを含めた世界の企業との競争に巻き込まれているという点にある。
経済産業省『企業活動基本調査統計』によれば、日本企業は、国内子会社の整理統合を続ける一方で、海外子会社数を増加させており、今や海外に子会社を保有する企業の方が国内のみに子会社を保有する企業よりも多くなっている。
海外生産が進んでいる自動車などの輸送機械産業では海外生産割合が40%に達し、それ以外の産業でも20%。当然のことながら、日本企業によって雇用されている海外の従業員の数も増え、2012年時点ですでに全産業合計470万人を超えている。
人材採用もまた、こうした経営のグローバル化に対応する必要があるのだが、この部分で日本企業はかなり分が悪い。
経済産業省の調査が明らかにしている通り、現在、日本の大学で学んだ外国人留学生のうち、7割が日本での就職を希望しながら、実際に就職しているのは3割にとどまっている。合計すると年間1万人の留学生が、学生時代を過ごした日本を離れ、他の国で就職している計算になる。
これには永住権を取りにくいなど国の制度に関わる理由もあることはあるが、それ以上に企業風土や雇用のあり方、昇進や評価、育成の仕組みへの不満、そして採用活動の不透明性など、企業の人材マネジメントに起因する点がネックになっているようだ。
また近年では、日本の大学を出た優秀な日本人が、日本の労働市場ではなく世界の労働市場で勝負をするという現象、さらには高校を出ていきなり世界の大学へと飛び出し、そのまま海外の労働市場で就職活動をする人材も、少ないながら現れ始めている。
こうした人材がアメリカ企業、欧州企業、そしてアジア企業に採用されているとすれば、日本企業は「潜在的な求職者に出会うことすらできていない」という形で、すでにグローバルウォー・フォー・タレントに巻き込まれ、負けているといえるのである。自社がグローバルな競争に参戦する気があるとかないとか、そういうレベルの話ではないわけだ。