世界を見て、世界から学ぶ

 日本という国に勢いがあり、日本企業が世界を席巻していた1980年代であれば、「日本は特殊であり、他国から学ぶことはない」というスタンスにも一定の意味はあったのかもしれない。しかし、それは遥か遠い昔のことである。

 シンガポール国立大学に通う、私の知り合いの学生によれば、「シンガポールの大卒者にとって日本企業はほとんど人気がなく、シンガポール政府、アメリカ企業、欧州企業、中国韓国企業、シンガポールのローカル企業ときて、その次にようやく候補に挙がるかどうかといったところ」のようだ。

 くどいようだが、日本企業はすでにグローバルなウォー・フォー・タレントに巻き込まれ、負けている。まず、この現実を認識するところからスタートしなければならない。

 その上で、この連載では、世界の企業の採用に目を向けてみたい。「人材がこそが最重要のリソース」だと本気で信じ、それを実行に移している世界の企業では、一体どのような人材採用が行われているのか。その中から、日本企業にとって学ぶべき点があるとすればそれは何か。世界の企業との差異ではなく共通点に注目することで、こうした点について考えてみたい。