携帯実質無料規制から
1年8カ月後の新たな懸念

 とはいえ、MVNOにユーザーが流れたものの、端通法施行で補助金などのマーケティング費用が大幅に減ったおかげで、通信キャリア3社の収支は大幅に改善した模様だ。

 朝鮮日報は、「端通法以降、通信キャリア3社のマーケティング費用合計は、前年比で1兆ウォン(5月18日時点で約910億円)も節約でき、営業利益も大幅に改善した」と報じた。また、韓国消費者連盟も「キャリア3社の2015年営業利益は、3兆6000億ウォン(同約3300億円)で前年比1.8倍になった」とし、「利益を消費者と共有すべき」と主張した。

 しかし、サムスン電子やLG電子の韓国産スマートフォンは日本円でおよそ8万~9万円。すでに飽和している市場で、新製品の価格が高くて売れないのでは、販促コストが減って収支が改善したといっても、通信キャリアはもちろん、端末メーカーも喜んでばかりはいられない。

 4月24日付の韓国経済新聞は、「いつまた端末購入補助金規制が緩和される分かわからないので、お金を他の投資に回せない」という通信キャリア側の不安を伝えている。

 そして、もう一つの大きな変化は、機種変更をせず長期間同じ端末を使う人や中古端末を利用する人が増えたため新製品端末が売れず、主にキャリア直営店以外の中小携帯ショップが経営難に陥って、次々と倒産したことだ。ここ最近で1000軒近くの携帯ショップが倒産したという報道もある。

 一方で、通信キャリアのテレビCMも、専ら各種サービスとのバンドルによる割引料金や家族割引、メンバーシップ割引(注2)、あるいは、キャリアが開発したアプリの宣伝などが多くなった。

 これらは、「格安携帯」へのユーザー流出が続く中で、データ通信のユーザーを増やし、利用料から数パーセントを代理店に還元することで、何とか直営以外の代理店を生き残らせようとするキャリアの苦肉の策なのだ。

 とかく施行当初から「キャリアだけが儲かる」という点だけがクローズアップされがちだった端通法だが、ここに来て、安価な中国製端末の普及で国内メーカーの開発が停滞し、韓国語の入力など国特有のユーザビリティに影響が出ないか、あるいは、韓国メーカーの競争力自体が低下するのでは、といった懸念の声も挙がっている。

 日本の「実質ゼロ円」廃止は、携帯市場にどんな影響を及ぼすのだろうか。


注2:メンバーシップ割引:年間の支払い通信料に応じ、提携店で各種割引や無料サービスが適用される特典