「課長を部長や本部長にするとき、その期間の実績や成果だけでは決めない。課長の年齢、入社年次、同期生の昇格の状況、本人の性別や家庭状況、今後の伸びしろ、社長や役員からの評価、過去の人事評価、大きなトラブルの有無、今後の体制における課長の想定され得る位置づけや扱い、部下や取引先などとの関係づくり……。そして、前任の部長のもとで起きた問題や課題、それらを課長が克服できるか否か、今後の会社の事業戦略。これらを総合的に見て、相対的に決めていくのが人事の処遇。特定の期間の成果や実績だけで昇格や人事異動、リストラの対象になるかどうかを選定している会社は、ほとんどないはず」

 これは、幅広い観点から広く、深く判断し、適材適所の人材を選ぶということなのだろう。逆に言えば、評価される側にとってはどこかに曖昧さがあり、理不尽で、納得できない感情が残る。人事コンサルタントは、「人事の妙」という言葉を使って説明していた。

「人事の妙というさじ加減を心得て、適切な判断ができるのが優秀な人事マンであり、管理職であり、経営者。人事の妙の意味がわからない人は、人事権を持つべきではない」

 この捉え方に近いことは、筆者がここ十数年の間に接して来た、中堅・大企業の人事部の役職者たちの半数近くが、話すことでもある。人事の処遇が「相対的に決まる」ことはやむを得ないとしても、そこには一定の歯止めがないといけないと筆者は思う。「相対」という名のもと、「さじ加減」という恣意・主観が浸透し、人事権を持つ人にとって都合のよいことは社員に伝えられるものの、不都合なことが覆い隠されるのは好ましくない。

 本来は、採用や配属、昇格、異動、リストラなどが決まっていくプロセスや決定理由などは、可能な限り本人に伝えられるべきだ。これらが、キャリア形成や生き残りの術を人事対象者に意識させる、貴重なステージとなる、

社員に評価の理由を説明することは
キャリアを積ませることにつながる

 たとえば、前述の人事コンサルタントの話を基にして言うと、ある課長を「部長に昇格させない」と判断したときは、少なくともこんなことを本人に伝えたい。

「今回、部長になる○○がこんな評価を受けていて、同期であるあなたはこんなに低い評価のグループにいる。今後の伸びしろを考えると、○○はここまで成長すると思われている。○○にはこんな力があり、こういうことができると判断された。それに対してあなたは、その力がこれほど足りない。だから、部長にはふさわしくない」