加藤周一『読書術』(岩波現代文庫、2000年)

 実際に加藤周一は、東大病院への通勤時に『ラテン語文法捷径』という教科書を購入したそうだ(書誌情報は国会図書館にもないので詳細不明)。小冊子で、数少ない単語で文法を説明していた。羅文英訳、英文羅訳問題が付いていて、辞書がいらないほど少ない単語で構成されていた。電車の中ではこの本だけを読み、電車から出たら一切開かなかったという。1年間実行したそうだ。通勤電車限定の読書術である。

 なるほどと膝を打ち、さっそく真似しようとしたが、高校は田舎だったので通学電車は満員ではなく、常に座れたので加藤式の語学勉強法ではなく、一般的な読書に終始したが。

 それにしても、通勤電車だけでラテン語を習得するとは、凡人には想像を絶する頭脳である。

 こうして通勤通学の時間と空間を活用することにして読書の効率化を図る。次に、対象とする本を分類して効率化することを考えよう。

途中でやめようと思っても
最後までページはめくる

 評論家・吉本隆明(1924-2012)も加藤周一の『読書術』のような本を1冊残している。吉本は本を2つに大別する。

吉本隆明『読書の方法』(光文社文庫、2007年)

「本には直ぐ役には立たない本と、直ぐに役に立つ本と二種類ある。直ぐに役に立つ本は書いてある通りに役立ってくれる。直ぐには役に立たない本は、ちょっぴりだが、いつも無限のむこうから手を振って、あなたの喜怒哀楽に応えてくれる。本は言葉で織りあげられていて、すぐに本の表情を知ることはできないかもしれない。そんな時には、すこし本と遊んでいると、昼間の星のようにかすかでも、珠玉のような表情が浮かんでくるものだ。それは愉しい経験ですよ」(吉本隆明『読書の方法』(光文社 2001年、光文社文庫、2007年)。

「すこし本と遊んでいると」、つまりパラパラとめくっていると、直ぐには役に立たないと思っていた本から珠玉の言葉が脳に入ってくるという。

 具体策はジャーナリスト・立花隆(1940-)が教えてくれた。立花隆には書評集など、本に関する著作が5点あるが、その中で最初の作品『ぼくはこんな本を読んできた』の一節にこう書かれている。「『実戦』に役立つ一四カ条」と題した文章から引用する。