「長期修繕計画での資金不足は積立金の2倍に上る」こんな財政破綻予備軍になっている分譲マンションが大半となっている。しかし、こんな放漫財政に対して鋭いメスを入れると、解決できてしまうことも多い。あとは、気づく時期がどれだけ早いかで治癒の難易度が変わる。それは「早い者勝ち」であることは言うまでもない。

財政破綻マンションに見る
数多くのコスパ改善事例

財政難マンションの「高管理費」「修繕積立金不足」を同時に解決する法世間では、「高管理費」「修繕積立金不足」など財政破綻予備軍になっている分譲マンションが大半となっている。どうすればコストを改善できるのか

 まずは事例を紹介しよう。

 Aマンションでは、年間3100万円だった管理委託費用が2200万円へと900万円の削減に成功した。比率にして29%の削減である。この浮いた900万円が、そのまま修繕積立金に置き換えられて、長期修繕計画書では30年間で2億7000万円修繕積立金が増加した。これにより、十数年に一度の大規模修繕工事1回分がまかなえるほどの効果となった。

 Bマンションは500世帯以上の大型マンションだが、清掃業務や管理員業務に不満があった。そもそも管理会社に委託している仕様変更から手がけてサービスレベルを向上させながらも、コストダウンに成功した。その金額は、年間約5000万円だった管理委託費用が約3400万円なので、32%の削減となった。このように、品質を向上しながらも3割ほどのコスト削減を実現したわけで、顧客満足度が格段に向上するのは言うまでもない。

 そもそも新築分譲マンションは販売に当たって、管理費は割高に、修繕積立金は低めに設定されている。どちらも支払うのはマンションの購入者であるが、管理費は管理会社に、修繕積立金は工事会社に支払われる。管理会社は売り主(分譲マンションデベロッパー)の関連会社であることが多く、充分な利益が生まれるように設定されている。リーマンショック後、破綻しそうなデベロッパーは管理会社の上場や売却(M&A)で危機を凌ごうとしたくらい、管理会社は安定収益を生む構造になっている。

 これに対して、修繕積立金が不足することは大規模な支出が12年目までないので、10年ほど気づかれないことが多い。そのため、購入負担が少ないように見せかけるために、売り主が修繕積立金を新築時点では安く設定しておき、数年おきに値上げをしたり、大きな工事があるたびに一時金を徴収したりしているマンションがとても多い。これもデベロッパーが新築物件の販売をしやすくする戦略の1つで、買い主が後から深刻さに気づくという大きな落とし穴になっている。