提案型PBを前面にニーズを掘り起こす

 カインズ(群馬県/土屋裕雅社長)は2010年7月17日、旧カインズ伊勢崎店を改装したショッピングセンターのいせさきガーデンズ内に「カインズ・シーズンストアいせさきガーデンズ店」をオープンさせた。同業態はカインズとして初となる、自社開発のプライベートブランド(PB)商品だけを揃えたコンセプトショップだ。

 現在約1万2000SKUのPB商品をラインアップするカインズだが、この店舗では約2000SKUに絞って品揃えする。「新しいライフスタイルを提案できる自社開発商品を中心に、シーズンごとに紹介していく新しい店舗」(同社広報部)。

 店内には、定番となっているPB商品はあまり重視していないようだ。購買頻度の高い洗剤やペットフード、リフォーム関連、そしてプロ向けの工具はない。定番商品の数量を売る戦略ではなく、あくまでも季節性を重視し、来店客の五感に触れるようなPB商品を前面に出している。

PB戦略は第3段階へ

店名のとおり、シーズン商品を前面に訴求する。ゴンドラではなく、平台でPB商品を展開するのは初めての試み。ヴィジュアルマーチャンダイジングを強く意識した商品戦略が明確だ

 このシーズンストアをオープンしたことで、カインズのPB戦略は第3段階に入ったといえる。第1段階では日用品を中心にプライスブランドとして低価格訴求に加えて機能性を付加し、カラーリングを統一した。そして第2段階では、PBに共通する商品の外側、つまりパッケージデザインを統一し、カラーリングも落ち着いたトーンを強調・集約することで、生活者にわかりやすく訴求することができるようになった。そして、第3段階としてカテゴリーごとにPBを訴求するのではなく、カテゴリーを横断して自社商品で新しいライフスタイルを提案する挑戦を、このシーズンストアで実現している。

 たとえば、店舗入口に配置したのはアロマキャンドル。腰の高さに合わせたテーブル形式の大きな台座に5種類のアロマキャンドルを並べ、その裏側にはアロマキャンドルの効能に合わせたカラーリングのバスタオルを配置した。ローズの香りであればピンクのタオル、レモンであればイエローのタオルという具合に、リラクゼーションのシーンを提案する。

 実際に店舗を見て回ると、こんな商品があったのかと気付かされることも多い。普通は生活者がいま必要とする“ウオンツ”を重視しがちだが、この店舗では既存店舗では目立たない、潜在する“ニーズ”をくすぐるPB商品を揃えた。

「通常であれば広い店舗内をすべて見て回るお客さまは少ない。認知されていない自社開発商品も多く、お客さまに当社がここまで提案できることを理解してもらいたい」(広報部)。店舗からすぐ近くには、同社の旗艦店である「カインズスーパーホームセンター伊勢崎店」がある。同社への認知度や、PBが深く浸透しているエリアでの新業態開発で、潜在するニーズを掘り起こすことができるか試されている。


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